いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

搾乳に困る!(ボストン編)<出産祝いに自動搾乳機をもらった>

「自動搾乳機は素晴らしい」(長女2歳1ヶ月、双子0ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

双子が無事産まれたのはなによりだったけれども、長女の育児も忙しい。とくに長女は発達に問題もあったので、何かと手が掛かる子だった。

 

0歳児の育児は困難でしかない。特に最初の3週間はボロボロになる。しかも双子ということで、これはやばいだろうと想像していた。そのためいろいろな準備もして、何があっても平気なようにと少し過剰に準備をしていたかもしれない。しかし、最初の2週間は1人だけだった。

 

双子が生まれたとき、三女にあたる1人の子の具合があまり良くなかった。言葉の通り「あまり良くない」という程度で、病院でもそんなに心配しないでいいと言われていた。ただちょっと酸素不足になりやすいということで、病院の規定から2週間ほど保育室で育てることになるということだった。

 

三女の状態が重くないということもあり、僕は、心のどこかでよかったと思ってしまった。最初の2週間は少なくとも1人だけだ。ここで0歳育児の流れや、不足物資の点検などをすれば、乳児2人を受け入れる体制は完全になる、と思った。実際に、三女が2週間遅れて我が家に来たときには、乳児の育児は規則正しく回るようになっていた。ルーティンが完成していた。

 

1人が2人になるのはもちろん大変だ。大変だけれども、すでに完成されたルーティンの中に1人増えるくらいは問題ない。ベビーベッドも用意してあるし、おむつ替え台も譲ってもらった。長女が乳児だった頃からまだ2年しか経っていないということもあって、僕の腕はまだ鈍っちゃいなかった。経験というのは大きいと思う。

 

乳児ケアだけを経験したわけでもない。長女のときに学んだのは経産婦ケアの大事さだ。2年前はフリーランス仕事の仕方なさとはいえ、長女が生まれて2週間のときに仕事が入ってしまったことをずっと後悔していた。二度目の出産では、予定なんていれてないし、オンライン会議ですら全部キャンセル、完全な育児モードと共に、経産婦ケアを重視した。

 

とくに帝王切開だったということもあって、妻の回復は遅い。

 

家事に育児に鍛えられた2年間の経験をフルに発揮したので、今回は後悔するものはあまりない。ただ、ちょっと哺乳瓶にこだわりすぎて、妻に細かいことを言ってしまったというのがあった。

 

今回も母乳とミルクの混合だった。双子の場合は母乳が足りないからミルクが増える。アメリカでのミルクも慣れたもんで、僕のお気に入りすらある。長女のときに余ったミルクを飲んでみておいしかった。自分がおいしいと思ったものを子供にあげるのは少し嬉しい。

 

前回の出産では手動搾乳機を使った。乳児のために搾乳するのは当たり前なのだけれども、搾乳が大事なのは乳腺炎にならないためでもある。手動搾乳機はあまりうまく使えなかったことから、前回、妻は乳腺炎になった。とても痛そうだった。また乳腺炎の母乳は乳児も飲まない。

 

そんなことから、今回は多少値段が張っても自動搾乳機を買う予定だった。でも買わなかった。貰えた。

 

マサチューセッツ州だからなのか、良い保険に入れているからか、分からないけど、出産をすると自動搾乳機がプレゼントされる。太っ腹だ。もしかしたら、自動搾乳機をプレゼントする方が、乳腺炎や乳児のケアも含めた医療費負担よりも安く済むからという合理的な考えもあるかもしれないけど、自動搾乳機のプレゼントは他のどんなプレゼントよりも嬉しかった。

 

長女を寝かしつけてから、妻が自動搾乳機で搾乳する。リビングルームに自動搾乳機をセットして煮沸した哺乳瓶を用意する。そして妻が搾乳するのを、僕はじっとみていた。軽快な音をずっと聞いていると、何かの言葉に聞こえてきそうな気がした。

 

「いつも見てて飽きないの?」

 

「今日は何mlでるのか、どのくらいで溜まるのか見ていると飽きない」

 

「乳牛になった気持ちがする」

 

妻は笑っていた。

 

そして深夜から明け方にかけて僕がミルクをあげた。まずは妻の一番搾りの母乳、そしてミルク。朝少し寝て、またお昼前くらいから僕が一番搾りの母乳とミルクをあげる。

 

妻が直接双子にあげることもあったけど、双子は母乳やミルクの飲みが悪い。2人となると妻の疲労も溜まる。そのため、負担が少なくて済む自動搾乳機を利用した方が、育児の負担は減り、母乳も定期的にあげることができる。

 

母乳より、僕が厳選したミルクの方が双子には人気があった。だんだんと妻の母乳は飲まれなくなってしまった。なんだか悲しい感じがするけど、妻も僕も明るく育児をしていた。

 

「せっかく搾乳してもらったけど、飲まなくて捨てちゃったよ」

 

「気にしないでいいよ、2人ともなかなか飲んでくれないし、乳腺炎にならないために搾乳しているようなものだから」

 

自動搾乳機は乳児のためだけにあるのではない。母体を守るためにもある。