いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

進級に困る!<3>(自閉症児篇)<情緒級から通常級という選択肢>

進級に困る!<2>(自閉症児篇)の続きになります。

 

長女はこのところとても成長している。勉強面の成長というよりも、精神面の成長とでも言うのか、以前よりも前向きに何事にも取り組むようになっている。これまでも長女が急に成長するようなことはあった。療育などは長女の成長にとってとても良かったと思っている。逆に、保育園などの普通の子たちが成長する場所では、長女は遠慮しがちになってしまったり、ネガティブな気持ちになることも多かったようにも思う。支援や配慮が得られない場所では長女はちょっとした躓きを乗り越えることができないのだろう。ちょっと人よりできない、ちょっと人より理解できない、ということが長女にとっては大きなことになってしまったのかもしれない。

 

そんな中で療育は心強い場所だった。僕らでも気が付かないような長女のちょっとした躓きに気づいて手を伸ばしてくれることも多々あったためか、療育での長女は生き生きとしていることが多かった。そうなると、数ヶ月間、三姉妹別園になってしまって長女が療育に通えない期間ができてしまったのは残念だった。これは日進市の保育行政を恨むしかない。長くなるので日進市のことは忘れよう。そもそも日進市に引っ越してきたのは、日進市の保育行政ではなく、日進市の小学校とその環境が目当てだった。日進市の保育行政のせいで日進市に不信感が生まれてしまったので、小学校はどうなることかと思っていたけれども、さすがは小学校。大事なところは文科省管轄なので、地方行政による裁量権の濫用ができない。安心した。

 

地方自治体独特の偏狭さから解放されている小学校の場合、今度は、地方ゆえののびのびとした教育が受けられるというメリットが出てくる。長女はそんな小学校にのびのびと通っている。情緒級の取り組みが素晴らしいという一言に尽きるかもしれない。

 

困ったことがあった。

 

夏休みが終わり、新学期になった。長女の担任と話し合いの場が持たれた。担任の先生とはこまめに連絡も取り合っているので、長女の障害特性や現在の状態についての見解の相違などはとくになく、楽しく健やかに前向きに長女が小学校に通えていることに感謝をした。そして担任の先生からある提案があった。「通常級に移ることも可能」というものだった。

 

「2年生から通常級を希望されるのであれば、通常級に移ることもできますが、どうしましょうか?」と、担任の先生から言われた。言い方から類推すれば、情緒級のままでもいいし、通常級に行きたいという希望があれば、それも可能というもので、これは入学のときにも言われたことでもある。

 

「それは、長女の障害の状態から、情緒級より通常級の方が長女にとって良い、という先生の見解ということでしょうか?」

 

と、別に相手を責めているとかそういうのではなく、長女を取り巻く周囲の専門家たちそれぞれの見解を聞きたいというのが、僕にはあるので、長女に対しての見解としてなのか、それとも、保護者の希望を聞こうとしての提案なのか、そのあたりをはっきりさせたいというのがあった。障害児の親の心境として、できるだけ良い方に、というのは言い方に語弊があるけれど、障害が良くなった、あるいはなくなった、と思いたいという気持ちが常にあり、ちょっとでも都合良く解釈できる言葉があるとしがみついてしまうために、こういうときには曲解や誤解が生まれないようにハッキリしておいた方がいいと思っている。確証バイアスみたいなものは多かれ少なかれ人にはあるものだ。

 

「長女さんのことを考えると、情緒級でうまくいってるため、このままもいいと思いますが、保護者さんの意向として通常級にしたいというのであれば、通常級に行くこともできますという意味です」

 

これはなかなか難しい話でもある。先生がこのような提案をすることはおかしいことではない。なぜなら、発達障害や軽度知的障害、自閉症などの場合は一見、普通に見えるというのもあって、保育園等でそれらの障害が指摘されたとしても、通常級に入れたいと思う保護者は多い。実際、僕の弟家族も支援級ではなく通常級に長男を入れていた。これには世間体とか考えの狭さとか偏見があるとか、そういうネガティブな理由もあるだろうけれども、障害として軽いのであれば、通常級に慣れることでちょっと変わった子として社会でも生きていける免疫力をつけよう、という考えもあるだろう。しかし、発達障害や軽度知的障害、自閉症について調べれば調べるほど、早期介入が必要だとも思うで、早い時期に情緒級なりに入っておく方が効果的だと僕は思う。そして本人が通常級に行きたいと言い出したら、そのときになって通常級に移動すればいいと思う。最初から通常級に行ってしまうと、情緒級や支援級を勧められたときに本人が嫌がることがある。甥がまさにそんな感じだ。本人の中で偏見が生まれてしまう。ましてや軽度知的障害や発達障害であれば、一度生じてしまった偏見を克服するのは困難だ。

 

進級に困る!<4>(自閉症児篇)に続きます。