いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

進級に困る!<5>(自閉症児篇)<長女は来年も情緒級に通う>

進級に困る!<4>(自閉症児篇)の続きです。

 

小学校の情緒級の担任の先生から、来年は情緒級に移ることも可能という提案を受けたが、この提案は、長女の状態などから導き出した見解ではなく、保護者の意向を確認するということだったようだ。僕らとしても、長女の小学校での生活をよく知っている担任の先生や、療育や自発センターの専門家たちから、通常級に行く方が良い、という見解を受ければ、もちろん通常級を選択するだろう。情緒級はとても気に入っているけれど、気に入っている理由は、長女にとっていい環境だからということであって、情緒級に僕が執着しているというわけではない。

 

しかし、担任の先生が保護者の意向を尊重してくれるように、僕ら保護者は、実際に、小学校に通っている本人の意向も尊重すべきだと思う。言語認識能力や判断能力が低い状態だと、本人の意向もまた本人にとってもよく分からないので、本人の意向を聞くというのも、なかなか難しいことでもある。ただ、最近の長女の言動を見ていると、通常級に行きたいか、情緒級に行きたいのかという判断はできそうな気がしたし、なによりも、長女の最近の成長は精神的に前向きになっているゆえに起こっていることでもあるため、本人のやる気を削がないようにすることが大事なような気がした。すると、本人も来年も同じ情緒級に行きたいと言っていたので、長女は来年も情緒級に通うことにした。

 

困ったことがあった。

 

2年生からも情緒級に進むということが長女と僕らの間で決まり、担任の先生にもお知らせした。そんなタイミングで、今度は通っている療育から支援計画の見直しの話し合いと、自発管との面接があった。

 

療育の支援計画見直しは、半年に一度ほどある。短期的な目標と長期的な目標を立てる。長女も成長してきているので、とくに短期的な目標は毎回、更新されていく。またこの話し合いのいいところは、半年前に僕らが長女に感じていたことが今では感じなくなっているということもあって、近くにいると気がつかない僕らが向けている長女への視点の変化が明確になるというのがある。この日の話し合いでもずいぶんと発見があった。長女は、多くのことができるようになっている。集団行動にしても、危険予知にしても課題としていた部分の多くをクリアしていた。そしてクリアすると次の課題が当然出てくる。この日は、何か言いづらそうにしているいつも優しい理学療法士さんに、長女がなかなか成長しないところである言語指示について話した。

 

理学療法士さんは、長女の生活面、運動能力や体幹等、言語指示以外のところはとても褒めてくれた。これも語弊のある言い方になってしまうけれども、平均よりもできていることが多い、ということだった。何度も書くけれども、長女のいわゆるIQは言語認識能力以外は平均的だ。言語認識能力だけが低いため、平均すると軽度知的障害になる。しかし、これも他の部分がどんどん向上しているため、軽度知的障害の認定も、次の更新ではなくなる可能性が高いと言われている。つまり、長女は、言語認識能力以外は知的能力に問題がないというよりも、どちらかというとちょっといいくらいでもある。しかし、言語認識能力は年齢の平均よりも低いままである。長女なりに成長はしているけれども、他の子供たちも成長しているのだから、相対的に見ればそうなってしまう。

 

理学療法士さんに、「言語指示がやはり苦手なようです」と学校でのことなどを話すと、理学療法士さんは笑顔で「そうですよね、そうですよね!」と言って、いろいろな例を出してくれた。これだとできるけれども、これだとできない、とか具体的に示してくれた。長女のためにいろいろと考えてやってくださっているんだなあ、と僕は嬉しくなった。そして長女の支援計画を見直した。この作業はとても大事だと思う。支援計画はなにも療育施設だけではない、家庭でも念頭において行うことでもあるからだ。

 

それから数日後、発達児童センターに行って、これまた支援計画や療育手帳の更新手続きを行なった。こちらの自発管もとても親身な方で、僕はとても信頼している。療育で話したようなことや、学校での様子なども話、そして最後に総合的な支援目標を立てることにした。長女の場合は、自分の気持ちや人の気持ちが分からないというまさに自閉症の特徴があるためそのことを話した。しかし、これ自体を目標とするには具体性に欠けるため、具体的にするために、「ルールと違うことが起きたときに大人に聞くようにする」という目標にした。自分の気持ち、他人の気持ちが分からないということから離れているようだけれども、このような目標になるのは、長女の障害特性や環境、トラブルの性質などから導き出した当面の目標というものであって、自閉症児すべてに適応されるものでもない。それこそ、その子を取り巻く多くの視点から導き出される。支援計画も目標も保護者の独断で決めてはならない。もちろん、自発管の独断でもダメだと思う。ここに至るには、保護者と自発管の話し合いで信頼関係を築く必要があるので、それこそペアレンツトレーニングが大事なのかもしれない。

 

進級に困る!<6>(自閉症児篇)に続きます。