いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

紛失物に困る!<8>(自閉症児篇)<物が失くなる原因はさまざまだ>

紛失物に困る!<7>(自閉症児篇)の続きです。

 

長女の物がこのところよく失くなっている。長女の不注意というのももちろんあるが、長女が失くしたというよりも、誰かが「とった」という可能性もある。そして、誰かが「とった」にしても故意と過失の違いもあり、また故意の場合でも、好意によるものか悪意によるものかという違いもある。そこにややこしいのが、支援級に通っていると、悪意にしても、それが差別や偏見によるものかどうか、というのも気になってしまう。大袈裟かもしれないが、紛失物にはこういう問題がある。このことを真剣に考えてくれる学校を信頼したいと思うし、話しても伝わらない場合は、信頼することできない。それはそれでしょうがない、そういう社会なのだと諦めるだけだし、そんな信頼できない社会が形式だけで包摂社会と言うことに苛立つことがあったり、障害者差別解消法が有名無実化することも、忸怩たる思いはするけれども、それこそ、民度や意識の問題になるのだろうから、理解できる人たちにだけ本音を言うようになるだけかもしれない。

 

困ったことがあった。

 

翌日の午後、担任と支援級主任と面談をすることになった。最初に、主任から「不信感を抱かせてしまったことを最初に謝らせてください!」と言われて謝罪された。僕は僕で、このところの長女の紛失物の不可解さと、夏の暑い日に野外で電話で対応していたためちょっとイライラした対応をしてしまったことを謝罪した。話し合いに関しては、紛失物などへの対応をめぐるもので、長女を含めた「失くす」側の不注意に対する定期的な声がけをすることを障害特性への配慮として行なってもらうこと、もう一つは、故意か過失かは分からないが「取った」側に対する注意喚起をどうするかということを検討した。最終的には、「取り違えが発生していること」を帰りの会等で話してもらうという程度にした。もう少し大袈裟な提案が主任からはなされたけれども、大ごとになることで支援級に対する「偏見」が助長されることは避けたかった。

 

これは根深いことでもあるけれど、市のアンケートにも「小学校などで差別的な態度を取られた」みたいな項目があって、パーセンテージでみると結構、多くの児童が差別を感じた、見た聞いた、と答えていることから、支援級に対する理解を深める活動が必要であることを提案した。入学式のときにも、他の通常級に通う保護者が支援級の名称をからかうように話していたことなど、大人の偏見の場合は本人の資質、あるいはその方にフォローやケアが必要なのかもしれないが、そういう保護者はやはりいることなどを念頭に支援級の運営をする必要を提起した。また、支援級の新しい仲間から聞いたことなども、事実としてあるかどうかはさておき、安心して支援級に通える雰囲気を作るためにも、今以上に生徒間における実際的な加害やいじめに見えにくい空気感のようなものにも注意を払って欲しいということもお願いした。ちゃんとやって欲しいというよりも、どちらかといえば、先生たちの中で、「うちにはそういうのはありません」と断言するようなことはせずに、「うちにもあるかもしれない」という注意の持ち方をして欲しいとお願いした。モンスターペアレントにならないように僕は僕で気をつけて話したつもりだ。長女のことで学校を含めた様々な施設で職員さんたちと話すときには、僕は「モンスターペアレントかもしれない」と思いながら接することにしている。

 

紛失物のことを先生などに相談すると、不思議なくらいに、紛失という状況よりも、紛失物の物の部分が言及される。ネッククーラーやヘアゴムなどに対して、僕らは物の価値や値段のために騒いでいるわけではなく、紛失という状況を問題にしているということを何度言っても、物についての話になる。「プールキャップがないとプールに入ることができないのでどうしましょうか?」と担任から言われたときに、すでに買い直したと言うと、その金額のことをさも済まなそうに言うのだけれど、大の大人がプールキャップ500円で済まなそうにされてしまうと、そこまで気にする値段じゃないとか思ってしまう。問題は、プールキャップ500円よりも、嫌がらせなどを受けることなのではないだろうか。まあ、これが2万円とかの物だったら済まなそうにして欲しいけれども、医療器具でもない限りは、2万円の物などを学校に持って行く方が悪いような気もする。学校に持って行っているちょっと高価な物としてGPSがあるけれど、GPSなら失くなっても見つかる。

 

翌週、展開があった。

 

月曜日に、長女のプールキャップが見つかったと先生から電話があった。同じ支援級に通う上級生が、取り違えなのか何かは分からないけれども、長女のプールキャップを持っていたそうだ。先生の話によると、何度も探してなかった筈の忘れ物カゴに長女のプールキャップが入っているのを長女の親友が見つけたそうだ。さすがの担任も、これはおかしいと思ったようで、犯人探しではないが、支援級全員に聞いたところ、1人の上級生が手を挙げて「持って帰っちゃって返そうと思ったけれど返せなかった」と言って泣いたそうだ。長女にもきちんと謝ってくれたようで、帰宅した長女が嬉しそうに話していた。長女は「いいよ!」と言ったらしい。他の紛失物は見つかっていないから根本的な解決にはなっていないかもしれないが、もっとも嫌がらせの類を思わせたプールキャップが見つかり、故意か過失かは分からないが、正直に言ってくれた上級生を責める必要はない。

 

学校からは、「買ってしまったプールキャップの料金を請求しますか?」みたいに言われたが、「同じ支援級に通う仲間ですし、こういうトラブルを乗り越えてお互いに成長するのですから、教材費だと思っております。弁償などの請求は一切しませんし、相手の保護者にも、お互いさまのことなので気にしていない旨をお伝えください」と返答しておいた。実際、今回の経験は、長女だけじゃなく、僕の勉強にもなった出来事だった。ちなみに、その上級生と長女はそれ以来、とても仲良しになっているらしく、長女の口からは頻繁にその子の名前が出てくるようになった。トラブルは解決の仕方によって成長するだけでなく、得難い友人などを見つけられる。