いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

ホリデーシーズンに困る!<6>(ボストン篇)<ホリデーシーズンには魔物が住んでいる>

ホリデーシーズンに困る!<5>(ボストン篇)の続きです。

 

渡米して二度目のブラックフライデーを僕は満喫した。双子が生まれることもあり、双子育児用にいろいろ買うだけじゃなく、お土産やら鍋やフライパンなどを買い漁っていた。オールクラッドAll-Cladのステンレスのフライパンや鍋など日本でならとても買えない値段だし、アメリカでも定価で買うとしたらそれなりに値段が高いけれども、ブラックフライデーのときに買えばちょっといいフライパンくらいの値段だ。僕が食事を作るのを今で楽しめているのは、このフライパンや鍋のおかげでもある。ブラックフライデーを満喫するために普段節約していてよかったと、買うときにはそんなことを思ってしまう。

 

困ったことがあった。

 

僕らのボストン生活は、企業などから派遣されている人たちに比べれば金銭的な余裕がなかったというのもあり、また育児に対する出費もあるとかなんとかで、節約生活をしていた。今のボストンの物価を噂に聞くと、当時のお金では節約どころじゃ済まないが、僕らがいた頃は家賃などは高いと思ったけれども、食料や衣料は税金がかからなかったからというのもあるが、日本と同じくらいか物によっては日本より安く感じた。そのため節約生活でどうにか乗り切れた。また、セールだけじゃなく、クーポンの類も充実していたので、安くするコツを掴めば節約もちょっと楽しめた。外食などはチップ文化というのもあって高くつくから外食はあまりしなかった。そんな感じでお金を節約して、ホリデーシーズンの予算も確保していた。

 

しかし、このホリデーシーズンとブラックフライデーのセールは誘惑が多い。いくら計画して余分なものは買わないようにしていても、安さに惹かれて買ってしまうものもある。必要で買ったものは覚えているけれども、それ以外にも安くなっているという理由で買ったものもある。そしてそんな理由で買ったものだから、何を買ったのか忘れている。セールで節約したつもりが浪費になっているのではないか? と僕が思うのはそこだ。

 

アメリカに来たときに最初に感じたのは、消費に対する向き合い方の違いとでもいうのだろうか。日本では贅沢品などであれば買ったときの喜びなどもあると思うけれども、必要で買うものに対して、買う喜びなどを感じることはなかった。しかし、アメリカに来て、長女のベビーカーをネットで注文したときに「コングラチュレーション!」みたいなメールが来て驚いた。何か当たったのかと思ったら、「注文承りました」的な意味で使われていた。言われてみれば、子供が生まれて、首も腰も座るようになり、やっと抱っこ紐なしで外出できるようになった象徴のようにベビーカーがあるのだから、乳児育児をしている者からすれば、祝われるのも嬉しいけれど、どうやらそんな祝われ方ではなく、ただ、買い物をしたことで祝われている。消費に前向きというのか、消費することで社会に参加していることになるというのか、消費をすることを祝われている感じは、僕にとってはじめての経験だった。

 

そして渡米から6ヶ月くらいして、今度は車がなくても行けるアウトレットみたいなところにも行ってみたら、そこでも「気に入ったものは見つかったかい?」みたいな感じで話しかけられ「これを買うことにしたよ」とズボンを見せると、「コングラチュレーション」などと言われる。僕としては体重が減ってきてしまって日本から持ってきたズボンが、まあ、そもそもくたびれていたズボンなんだけれども、糖尿病治療で食事療法をして痩せてしまってずり落ちてしまうから、気に入る気に入らない以前に、体重の増減が不安定というのもあって、間に合わせの安いズボンが欲しかったというのがある。ちなみに、このとき買ったズボンは最も痩せていたときに買ったものだから、一年後には履けなくなっていた。安く買ったものでよかった。あ、そういう意味では、コングラチュレーションまではいかないけれども、「ナイス!」くらいな感じの買い物だったかもしれない。

 

このアウトレットは便利で、とくに育児をしている人には助かる存在だった。はじめての育児でもあったから、子供服をどうしたらいいのかも分からなかったし、このとき長女が自閉症だということも分からなかったというのもあって、何が長女の気に入るものになるのかが分からず、色々な服を試していた。またボストンの冬は寒いし、僕らが住んでいたボロアパートは隙間風も入っていたため、部屋着でも暖かいものにしたかった。そうすると、ツナギのような上下から足の先まで繋がっている子供服が良さそうに思えた。長女に着せてみると気に入ったようで、このツナギタイプをよく着せていたけれど、ツナギタイプの唯一の欠点はオムツ交換のときに汚れやすいというものだった。そのため何着も必要になった。唯一の欠点と書いたけれども、もう一つ欠点があった。足の先までのツナギタイプの場合は、少し大きくなるだけでサイズアウトしてしまう。冬場用のツナギタイプはワンシーズンしかもたない。下手するとワンシーズンもたないこともあった。そんなとき、セールやアウトレットは助かった。そして、ツナギタイプは可愛いものが多いので、これはこれで育児が少し楽しめた。

 

育児をしていると、何が無駄で何が無駄でないかが分からなくなる。それに、本題に戻れば、セールなどでの買い物も何が無駄で何が無駄じゃないのか分からなくなる。育児とセールの相乗効果で、僕は必要な消費をしているのか、不必要な浪費をしているのかの区別が曖昧になった。今でも安さに釣られて買ってしまうものがある。Amazonなどで-49%などと赤く表記されていると、買わないといけないような気がしてくる。それが、育児や家事に使えそうなものだとついつい買ってしまう。節約しているのか浪費しているのか、自分では分からないものだ。

 

セールによって必要な消費をしているのか、浪費をしているのか分からなくなるホリデーシーズンは困ったものだ。アメリカの消費文化を象徴するようなシーズンなのだろう。