アルコールIDに困る!<上>(ボストン篇)の続きです。
アルコールIDの話をしようとしたのに、なぜか東京郊外の団地の話をしてしまった。ビールなんて飲まないと誓った子供時代。大人になると、誓いを忘れてビールが好きなった。そんなビール好きにとってアメリカはなかなか楽しい国だ。ビールが安くて、おいしい。しかし、アルコールを買うには、IDが必要だ。僕の見た目はアメリカでは若く見られているというだけかもしれないけれども。
困ったことがあった。
ボストンの初日。疲れ果てながらも、宿泊先について、子どもを携帯ベッドに寝かせて、スーパーマケットまでいった。そこでパンやら卵やら牛乳やらを買うつもりだったのに、卵も見つけられなかった。卵コーナーかと思ったらピータンコーナーだった。パンもなくて、包子みたいなのしかなかった。そこは中華系スーパーだった。
このままじゃ帰るに帰れない。近くにミニマーケットがあった。入ると、ちょっと柄の悪そうなお兄さんたちがたむろしていた。柄の悪い人たちに囲まれて育ったというのもあって、なんだか懐かしい気持ちになりながら、ヨーとかハローとか言いながら中に入っていくと、レジの人も柄が悪い感じだった。きっと舌にもピアスしているだろうと思うくらい、ピアスが刺さりまくってた。
アメリカのビールはよく分からなかった。どんな種類があるのだろう。ポーランドでビールかと思って買ったら、ノンアルコールビールだったこともあったこともあって、油断をするとノンアルコールビールを買ってしまうかもしれないと少し必死になって店内を探した。ボストン初日でノンアルコールビールなんて買っちまったら、悔しくて眠れないと思った。
「これ、アルコール? ノンアルコールビールじゃないよね?」
「オフコース」
「俺はノンアルコールビールなんて飲まないぜ」
店員さんも入口の兄ちゃんたちも笑っていた。日本から酔っ払いがやってきたと思ったに違いない。で、お約束の日本からから来たのか、とか、いつ来たとか、そんな話をして、ハバナイスデーでお別れだ。
ボストン初日にビールを手に入れて、祝杯をあげた。
さて、次の日、今度はスーパーマーケットに行ってみた。ストップアンドショップという大型スーパーマーケットで、清潔な感じの店内だった。そこは、中に酒屋が入っているタイプのスーパーマーケットだ。
アメリカのスーパーマーケットには二種類ある。酒屋が中に入っているスーパーマーケットかそうじゃないスーパーマーケットかという二種類。郊外店になればなるだけ、店内に酒屋があるらしい。
マサチューセッツ州モールデンは郊外だ。スーパーマーケットも大きいし、酒屋は中に入っている。で、この酒屋のレジに立つお姉さんがまた大きかった。僕は僕でそこそこ大きいのだけれど、僕より背が高い。そして、小さいニンジンをずっと食べている。どういうことだろう。
彼女がニンジンを食べてたとしても、ビールを買えれば問題ない。店内のビールの種類は豊富だ。そして安い。6パックを3つほどカートに入れて、レジはどうしたらいいのかと思った。最初に行ったときには、ニンジンのお姉さんをスルーしてしまって呼び止められた。
「お酒は、ここで会計するんだよ」
ファーストタイムのミステイクだ、ちなみに、僕はルー語みたいな感じで話している。
そこでIDを出せと言われた。IDと言われて持っているものといったら、パスポートと国際免許証だ。国際免許証は渡米前に江東区で交付してもらった。
「これじゃあだめ、パスポートには年齢が書いてないし、こっちの免許?はよく分からない」
これはインターナショナルなドライバーズライセンスだ、とかきっとそんなことを言った。
すると、ちょっと待って、私じゃ決められないから、みたいなことを行って、責任者を呼びに行った。すると、迫力のある妙齢の女性が出てきて、厳しそうな顔をしていた。
「これはUSで認められたIDじゃないからお酒は売れないよ」
ここで諦めちゃならない。でも今考えれば、ここで買えなくても、柄の悪いミニマーケットで買えばいいわけだから、なぜここで意地になったのか分からない。
アルコールIDに困る!<下>(ボストン篇)に続きます。