いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

あげるに困る!<下>(自閉症児篇)<長女とお友達の関係>

あげるに困る!<中>(自閉症児篇)の続きです。

 

長女とお友達の関係にどう介入すればいいのか、なかなか難しい。被害加害というのは、単純に割り切れるものでもないし、依存の関係というのも、必ずしも悪いということでもない。自立を重んじてみても、結局のところどこかで何かと依存関係を結ばなければ人は社会で生きていけないような気もする。難しい話になってしまいそうだ。

 

困ったことがあった。

 

そんな気持ちのまま、どうしていいか分からずに、また数ヶ月過ぎていた。

 

そしてまた、お友達のお母さんからお手紙が入っていた。今度はお手紙だけだった。お手紙にはまたヘアピンのことが書かれていたけれど、ヘアピンはなかった。

 

長女の言語能力は上がってきている。お手紙のことと、ヘアピンのことを聞いてみた。

 

「うん、宝石のヘアピンは持ってきちゃダメって言われて、何々ちゃんにとられた」

 

「あげたんでしょ?」

 

長女は沈黙してしまった。

 

「返してもらったヘアピンがここに入っていたと思うけど、それはどこにあるの?」

 

「何々ちゃん(別の子)がもっていった」

 

なかなかカオスだった。ちょうど、次の日、長女の保育士さんとお話しする用事があったので聞いてみた。

 

「長女ちゃんは、とても優しいので、すぐにあげちゃったりするみたいですね。泣いていることもあるので、お友達には返すように言っているんですけど、でも、大人の前だと、年中さんくらいになると悪知恵も働くようになっているので、バレないようにやっていることもあるんですよね。意外と子供たちの方がよく見ているので分かることもありますから聞いてみますね」

 

と、それが良いのか悪いのか分からないことが提案された。その担当の先生はとても信頼できる人なので、反論はせずに、そういうものかと、任せてみた。

 

次の日にお迎えに行くと、長女がヘアピンを持っていた。そしてどうやら、返却してくれた筈のお友達がまたそのヘアピンを持って行ったようだった。こっそり持って行ったというのではなく、子供たちの話によれば、長女にもう一度、もらっていたということだった。そして、子供たちからは、「何々ちゃんはよく長女ちゃんからもらってるよ」ということだった。

 

このことは保育士さんも気が付かなかったらしい。もちろん、僕も、そしてお友達の親御さんも気づいていない。なんて賢い子なんだろう、感心する反面、大人になったときに大変な目にあってしまうんじゃないかと心配にもなった。昭和や平成であれば、こういう感じでバレずにうまいことをやる人が活躍していた。もちろん、それが問題になることもあったろうし、いま色々なところで露見しているのは、そういううまいことやろうとした問題だったのかもしれない。そして今の時代は、そういう上手いことをやろうとした人に対しての風当たりが強い。ネットでちょっと困った人の特徴を調べてみると、すぐにフレネミーとかカバートアグレッションとかそんな言葉が出てきてしまう。僕にとっては、ADHD的な症状であっても、本人や周囲が対策を練らずにのびのび生きてしまうと、世間ではやべえ奴とされてしまう。逆に言えば、長女のような物理的、短期的には損をしている人に優しい社会になってきているような気もする。障害者差別解消法などは、いってしまえば、社会的に、物理的、制度的に被害を被っているとか、損をしている人に対しての配慮を求めるものとして作用していると思うから、ADHD的などちらかというと加害的なことをしてしまう人へのフォローや配慮はあまり考えられていない。

 

実際、僕らにしても、長女の大切なお友達であるにもかかわらず、ちょっと距離を置いた方がいいのではないか、とも思っている。どうしたらいいのだろう、答えは出ていない。一見、長女が鴨にされているようにも見えるけれど、その子にしてみれば、長女に助けを求めているだけかもしれない。長女がその子に助けを求めているように。僕にしても、周囲から彼らとの付き合いをやめるように言われながらも友人だったのは、世知に疎い僕のような人間は彼らから教わることがたくさんあったのだ。