いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

ビーンブーツに困る!<下>(ボストン篇)<返品文化いろいろ>

ビーンブーツに困る!<上>(ボストン篇)の続きになります。

 

アメリカの返品文化、消費者文化の根底には、アメリカの職人精神があるような気がした。L.L.Beanがそのことを教えてくれた。しかし、文化というのはいい部分だけでもない、よくない側面も出てくることがある。そんなお話です。

 

困ったことがあった。

 

ビーンブーツでの返品経験から、アメリカでは返品が簡単に行えることを知った。返品がアメリカの消費文化を支えていると言ってもいいだろう。

 

その代わりというのか、Amazonなどで注文して届くものは不良品というか、買ってすぐに壊れる湯沸かし器とかそんなのもたくさんあった。すぐに返品する癖がついた。

 

僕らが住んでいた場所の最寄駅、地下鉄セントラル駅周辺に、Amazonの店舗があった。Amazonの商品とか売っているのかな? と最初は思っていたけれども、そこは受け取りや返品ができる場所だった。子供との散歩帰りにそこによって返品していた。

 

クリスマスの後の数日。返品ボックスは満杯だった。

 

「クリスマスとかのイベントグッズを注文して、イベントが終わると返品するというのが問題になっているらしいよ」

 

アメリカの友人が言っていた。

 

L.L.Beanのようなクラフトマンシップに基づく返品文化が悪用されているのだろう。不良品や、サイズ選びが難しい物が返品できるというのはとてもいいことなんだけれども、パーティグッズなどがパーティで使用されたあとに返品されるというのは、なんだかちょっといやな感じだ。そんなパーティには参加したくないものだ。

 

そういえば、もう一つ聞いた話があった。

 

今はどうか分からないけれども、アメリカでユニクロがあまり受けない理由が返品にまつわるものだった。返品が当たり前になっているアメリカでは、返品するときに使用済みだろうが、レシートがなかろうが返品に応じるというお店も多い。そんな中で明らかに使い古されたパンツなんかを返品する人もいるという話があった。ユニクロは日本の企業ということもあって、使用済みパンツは行き過ぎだけれども、ちょっと試着してみたらサイズが合わなかったとか、レシートをなくしたというような理由で返品は受け付けないと思う。それがなかなかユニクロアメリカでうけない理由として挙げられていた。

 

衣類などの返品や生涯補償みたいなのを謳っているブランドはいくつかある。多くは、ハードな作業や環境にも耐えられると謳っているブランドだ。僕が好きなFilsonもそうだし、靴下のDarn Toughなんかも有名だ。不良品とかサイズ違いとかじゃなくても、持っていったら新品と交換してくれたなんて話もよく聞く。なかなか本社まで持って行けないけれども。

 

Filsonなんかは、着れば着るほど味わいみたいなのが出るから、きっとFilson好きな人は新品に交換してもらうよりも、リペアして欲しいという人も多いだろうし、そういう愛着を覚えさせる製品が多いのだから、生涯補償といっても、パンツを交換してくれというような人はあまりいないだろう。返品や補償を掲げるにはそれなりに理由もあるし、どんな客を相手にしているかを想定しているから言えるのかもしれない。

 

そんな頑強な服で有名なFilsonのジャケットを、日本に帰る2ヶ月前くらいに、自分へのお土産というかアメリカ記念にということで、セントラル駅近くのアウトドアショップで買った。二週間ほど着ていたら、背面のスナップボタンが取れてしまった。

 

アメリカだから当然、返品や交換ができるだろうと思ってお店に持って行くと、返品は受け付けないということだった。「Filsonは本社に送れば新品と交換してくれるから、うちじゃ交換してないんだよ」と言われた。Filsonはカスタマーサービスだけは最悪なブランドで、問い合わせなどは放置、いつになれば対応するのかも分からないようなところだ。本社に持って行けばすぐに交換してくれるだろうけど、ボストンからシアトルに送ったところで、数ヶ月忘れ去られる危険もある。僕はもう帰国する予定だった。

 

こちらの事情も放した。すると、裏の修理屋でリペアするということだった。修理屋は留守だった。いつ帰ってくるか分からないらしいし、直せるかも分からないなんて話が出た。

 

僕はゴネた。二週間前に買った証拠も出てきた。店長も困ったようだった。そして、折れてくれた。

 

「分かった、同じものと交換しよう」

 

同じもので、僕のサイズはなかった。違う色のものならある。そっちの色と、僕がもっている色は、最後最後まで悩んだものだった。

 

「そっちにするか最後まで悩んでいたんだ」

 

「これは君に着て欲しかったんだな」

 

ということで、交換してもらった。

 

アメリカは不思議だ。ちょっと揉めても最後は笑顔になって、お互いに気持ち良くなる会話があったりする。いまは遠く離れてしまったけれど、いつか、ボストンに行ったら、またあの店に行ってみたいと思う。