いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

銃撃戦に困る!(ボストン篇)<歩いて30分くらいのところの話>

「ボストンは比較的治安が良いと言われている」(長女1歳2ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

日本からアメリカに引っ越した人の多くの人の心配事は言葉とか文化とかよりも、治安ではないだろうか? 男の独り身であれば、そんなに心配しないかもしれないけど、乳児を連れて引っ越すとなると治安は気になるものだった。

 

アメリカでは、子供を1人にしないのが当たり前だ。子どもが1人で遊んでいることは滅多にない。そういえば、今は日本でも小さな子供だけで遊んでいるというのはあまりみないけれど、アメリカの場合は小学生くらいでも保護者がいることが多い。

 

誘拐の危険があるからだろう。

 

ボストンは比較的治安がいいと言われるけれども、小学生以下の子供がふらふらしていることはない。日本でも園児が1人でいることはないとは思うけど、たまに保育園などのルールによっては、兄弟児は保育園に入れてはならないみたいなのがあって、まだ6歳くらいの子供が保育園の外にいることがある。親は弟や妹の帰宅準備のために保育園の中に入ってしまって、外にいる兄弟は完全に親の目から離れてしまう。事故はもちろんだけれども、誘拐のリスクがあると思う。保育園のルールが事故や誘拐を誘発していると言っても、大袈裟だと言われてしまうだろう、実際にそんな事故や誘拐が起きるまでは。

 

僕が子供の頃は、3歳にもなれば、外で1人で遊んでいるものだった。はじめて迷子になったのは3歳の頃だった。家からふらふらと出歩いて車通りの多い道を渡って、ヒーローショーを見た場所に行ってしまった。ヒーローがいないことに気がつくと怖くなって、ずっと泣いていた。暗くなった頃に、父親が自転車で現れて家に帰った。微笑ましい光景だけれども、自分が親になると、当時の父親の放任主義はやべえと思った。まあ、でも昭和はそんな感じだ。

 

今は日本でも小さい子が1人でいることはあまりない。保育園の方針で保育園の外にいるというのは何度でも言いたいくらい危険なことでもあるけれど、というか、きっとアメリカだったら、なんらかの法律に触れてしまうような行為だと思うけれども、事件が起こるまでは、きっとそのままだろう。

 

治安の良い日本と治安の悪いアメリカでは危機意識が違うから、ということになる。

 

それもそうだと思う。やっぱりアメリカは治安が悪い。治安が良いと言われるボストンでも治安は悪い。治安の悪さからか、子供は5歳くらいまでベビーカーに乗っていたりする。日本から子連れで来た人なんかは3歳くらいからベビーカーに乗せなくなる。アメリカだとちょっと危ないと思われている。

 

そういえば、ボストンでこんな注意喚起があった。女性が未明にジョギングするのは控えようみたいなやつだった。特に川縁などを走るのは良くない。川縁の草むらに引き摺り込まれてしまうという事件があるからだということだった。なかなか物騒だ。

 

あと、やっぱりアメリカだと思った事件があった。

 

僕が使っている最寄駅ではあるけど、家とは反対方向で銃撃戦があったというニュースだった。銃撃戦と言っても、7発の銃弾が放たれたということで、怪我人も死亡者もでなかった。とはいえ、7発だ。銃だ。やっぱりアメリカだ。ボストンとはいえアメリカだと思った。

 

7発の銃の撃ち合いは、車に乗っている人同士で行われたという。ギャングなのか、それとも、交通トラブルが元なのかは分からない。アメリカではちょっとしたことで人に変なことを言うのはリスクがあると言われた。何する人か分からないし、どんな人が銃を携帯しているか分からない。ちょっとしたことを注意したり、または変なことを言ってしまって銃を向けられることがあるかもしれないからだ。もしかしたら、そんな危機意識があるから、妙に親切な人も多いのかもしれない。見知らぬ人にキレられる前に優しくしておいた方がいいという考え方もあるだろう。挨拶運動みたいなものだ。

 

銃撃戦の場所に行ってみた。

 

その場所は確かにそこそこ治安が悪い場所だった。駅も夜遅くになると、酔っているのかラリっているのか分からない感じの兄ちゃんが話しかけてくることもある場所だ。治安が悪いといってもそこそこ悪い程度で、東京の繁華街とあまり変わらないくらいの治安の悪さだと思う。なんか言ってきても、笑顔でYo!とかHi!とか言っていれば揉めることもなく、道を開けてくれる。

 

でもそんな場所から徒歩10分くらいの場所で7発の銃撃戦があった。

 

繁華街から10分も歩けば住宅街だ。綺麗な住居も建っている。便利な駅だし、ボストンでも比較的治安の良いレッドラインという路線だった。開発も進み、おすすめ物件も多数あるような場所。それでも、銃撃戦があった。

 

昼間に歩いてみても、危険な感じは全くない。どちらかというと長閑で平和そうなところだった。こんな場所でも銃撃戦があるんだなあと思っていた。

 

日本から妻の友人が研修か何かで来た。ボストン中心部は宿泊費も高いからということで、僕らの最寄駅にしたらしい。で、その銃撃戦があった場所の近くに泊まっていた。

 

銃撃戦なんてよくあることでもないし、そこまで治安の悪い場所でもない。繁華街も近いから男1人で泊まるなら夜だってそこそこ楽しい場所だ。

 

「ボストンって落ち着いていていいですよね。長閑で治安も良さそうですね」

 

と1週間ほど滞在する彼は言っていた。僕は銃撃戦のことは黙っておいた。知らなければ知らないでもいいことだし、知ったからといって宿を変えることもないようなことだ。ただ、その彼がもう2ヶ月前に、その銃撃戦のあった日にそこに泊まっていたら、治安がいいとは思えなかっただろう。

 

「ボストンやばいっすね、銃撃戦とかあるんですよ、治安最悪ですよね」

 

という感想になっていただけかもしれない。アメリカというのはそういう場所だった。もちろん、もともと治安の悪い場所というのもある。そういうところに行く人は知らないで行くということはまずないだろう。