困ったことがあった。
僕がいま住んでいるUR団地は全ての部屋にエアコンが付けられるようになっていない。子供が三人いるし、ミニマリストにもなれない収集癖もあるから、部屋数の多さだけで選んだURだった。
東京から現地を見ることもできないまま、間取り図見ながらURの現地案内の人に電話で話を聞いた。
「この部屋、エアコンつけられます?」
「こちらの部屋なら工事をすればつけられますよ」
そんなやりとりはURではよくあることだ。
東京のURのときも、二部屋はエアコンのコンセントの工事をして、帰国したばかりの頃で、よく分からなかったけれども、ちょうどキャッシュレスキャンペーンかなんかだったみたいのときにたくさん家電を買った。エアコンも2台買った。
ダイキンのベストを着た営業の方がおもしろおじさんで、ダイキンのことを一生懸命話してくれた。もともとはパナソニックかどこかに勤めていたらしいけれども、エアコン好きすぎて、いろんなエアコンの性能を調べることにはまったそうだ。
その中でダイキンが一番いい! ということだった。
エアコンも空気清浄機もダイキンを買った。
ダイキンのエアコンには問題点がある。本体が大きいから取り付けられない場所もあるということだった。
そういえば、自営業をやっている弟がコロナの影響かどうか分からないけれども、仕事が停滞してきたということで、つなぎになるか、そのまま本業になるか迷いながら、エアコン取り付けの仕事をやることにした。
「うるさらは取り付けられなくて、持って帰ることが多いんだよね」
仕事をはじめたばかりの弟でもよくあることらしい。それくらいダイキンのエアコンを取り付けるときには気をつけなければならない。
とはいえ、エアコンを選ぶ人たちの多くは、「きっと大丈夫だろう」とか思ったり、エアコン取り付けの部分を計測してみても、計測箇所がよく分からなかったりして、正確な数値がでないことがある。
僕の場合も、エアコンの取り付け金具の位置からいろいろ計測してからダイキンのエアコンを買ったのだけれども、いざ取り付けとなると、一つの部屋だけ、ほんのちょっとだけ、取り付け金具と天井の位置が近かったらしくて、ダイキンをつけられない部屋になった。日立のエアコンに交換してもらった。
そんなこともあったので、名古屋に引っ越すときには、エアコンの金具の位置なども確認したかった。だけど、現地案内所の人はよく分からないみたいで、たぶん大丈夫、みたいな感じだった。現地に行きたくても、乳幼児三人抱えて東京名古屋を往復するのはちょっと無理だと思った。
ぶっつけな感じで引っ越した。
エアコンをつけようと思っていた部屋は二部屋、一つは金具もコンセントも工事済み、もう一部屋は金具もないし、コンセントもない。つけられなかった。ダイキンのエアコンの大きさについていろいろ書いたけれど、名古屋の部屋は金具と天井の広さにも十分ゆとりがあったので問題なかった。問題は、一つの部屋だけつけられなかったことだ。
この問題も解決した。
引っ越し屋さんが荷物を紛失したり、積み忘れたりしたことがあって、そのことで問い合わせると、嘘をつかれたことの顛末は前にも書いた。最終的には現地の支社の確認などによって、紛失と積み忘れが確認された。紛失や積み忘れは仕方ないけど、最初からなかったみたいに嘘をついてきたことはちょっと問題だと思った。そのへんのことをネチネチやっていると、引っ越し屋さんの謝罪があって、金銭で補償するみたいなことになってきたけれども、それはやめた。
「そちらのミスとこちらのミスを相殺させて恨みっこなしの金銭補償なしってことにしませんか。お金はそのままでいいので、こちらの確認ミスで取り付けられなかったエアコンを取り付けてください」
なんてダメ元でお願いしてみた。
「いいですよ、取り付けます! 金具もコンセントもこちらで全部やりますよ!」
担当者さんは嬉しそうだった。金具取り付けとコンセント工事をURさんにお願いすると、提携会社の見積もりで、10万円くらいになっていた。引っ越し屋さんにやってもらえるのはとても助かる。ちなみに、東京のURでは金具の取り付けもコンセント工事も無料だった。同じURなのに、名古屋と東京で対応が違うのはどういうことなのかは分からない。
そして、うちの二部屋にはエアコンがついた。
困ったのはここじゃない。
僕の仕事部屋だ。
この部屋にはエアコンがつけられない。それは最初からわかっていた。わかっていたから、窓に取り付けるタイプのエアコンをつけようかと思っていた。
出窓だ。ここにきて、やっと出窓の問題だ。
出窓の開閉口は両サイドに押し開きになっていて、窓型エアコンがつけられない。困ったもんだ。そんなだから、移動式エアコンにした。
移動式エアコンはそのまま運転したら、排気が後ろから出てしまうため、部屋も熱くなる。前から冷たい空気、後ろから熱い空気、そんな空気が屋を循環するだけだ。排気をうまいこと出窓の方に取り付けようとしても、押し開きの窓に取り付けるのは難しい。
出窓の横の壁に排気口があった。そこから排気すればいいと思って、これも調べてみると、排気口の口径が問題になる。移動式エアコンの排気ダクトには小さすぎた。
口径を変換するためのジョイントを手に入れた。これならいけると思った。
いけるにはいけたけれども、むりくりねじ込む感じ。綺麗とは言えない状態だ。とはいえ、どうにか排気はできるようになった。
運転していると、涼しい。ナカトミのMAC-20。
涼しいんだけれども、無理やり口径を変換させたり、ねじ込んだりしたダクトが熱くなる。ダクトが熱いもんだから、部屋も少し熱くなる。室温は30度を少し下回るくらいが限界だ。
僕もおっさんになった。新陳代謝が落ちてきたからか、室温30度くらいならそんなに暑く感じない。これがきっと老人が暑い部屋の中で熱中症になる原因だと思った。子供の頃や20歳台の頃は20度くらいにしないと暑くて仕方なかったのに、いまじゃ30度で平気にしてられる。これは我慢とかそういうのじゃない。ただ体が少しバグってきているだけだ。
考えてみると、若い時、こっちが暑いのに年配の人は寒いといってエアコンを切ったりしていた。今時の若いものは暑さに耐えられないみたいな感じだった。自分がバグってるだけなのに。
僕もそんなバグが起こっている。
子供たちが暑いと言ったら、たぶん暑いんだろう。
僕の部屋は暑い。この部屋で夏場はあまり仕事をしないようにしようと思った。仕事をするときは水をたくさん飲もう。