いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

住民税に困る!(ボストン篇)<税金払えって言うなら払わせてよ>

「海外からの住民税の支払いはみんなどうしているんだろう?」(長女1歳)

 

困ったことがあった。

 

国外にいると、日本での手続きで困ることがよくある。日本に住んでいても、本籍と現住所が違う市町村だったり、都道府県が違うだけで、ちょっとした書類を取り寄せるのが面倒だったりもする。

 

ボストンに着いてから、荷物のことなどもあって、弟に定期的にLINEで電話していた。昔は、海外から連絡するとなると、国際電話だったから値段が高かった。今でも僕ぐらいの世代は海外との連絡をとるとき、昔の高い料金のイメージがあるのか、少し構えてしまうことがある。今は無料通話だったりもする。

 

弟には船便や航空便の連絡や、日本国内から送られてくる郵便のチェックをお願いしていた。僕や妻宛の郵便は母親の元に届くことになっていたけど、母親は何が大事で何が大事じゃないのか判断ができない。

 

弟には、役所関係の書類など、渡米前から予想されていた書類のチェックをお願いしていた。確定申告の書類なんかもある。普段、僕に送られてくる郵便にはほとんど手を触れない母は、なぜか確定申告関係の書類やカードの明細は本人でもないのに封を開けてしまう。やめてと言っても開けてしまう。海外にしばらく住む人たちはどうしているのだろう。メールなどで確認できるようになるといいのに、とか思ったりもした。また、実家や頼れる人がいない場合も、海外と日本の二重生活は困難な気もする。

 

日本から出る前に、転出届なども含めて役所や年金機構に行った。そのときに、さまざまな手続きを終えたけど、住民税に関しては確定していないからということで手続きができていなかった。

 

渡米後に何度か弟に確認してもらっていたが、役所からの通知は見つからなかった。

 

あるとき、妻の母親から連絡があった。妻と妻の母親とは関係があまりよくない。いわゆる毒親と言われるもので、妻は母親との距離をとって平穏にしていた。妻の母から連絡があったのは、僕らが住んでいたところの役所から住民税の問い合わせがあったということだった。

 

妻はうんざりした感じで、静かに怒っていた。転出などのときに役所と話しているときに、以前、妻は母親を養っていたことがあったために、妻の連絡先の一つに母親の連絡先があった。そこには連絡しないようにということで削除をお願いしていたと思うけど、削除されておらず、どういうわけか知らないが、住民税に関する連絡が妻の母親にまで行ってしまったのだ。

 

妻は役所に怒っていたけど、僕は僕で怒っていた。また母さんか、と思った。弟に渡さずに勝手に封を開けたに違いない。こちらがお願いしていることだから、叱るわけにもいけないし、そんな母親でも頼らざるを得ない日本のシステムに問題を感じるけれども、システムだけは便利になっているアメリカで暮らすと、日本の家族ありきなシステムは異様に感じる。

 

話は変わるけど、アメリカはシステムだけは合理的にできていることが多い。さまざまな配慮もシステム上はできている。ただ、人的ミスが異常に多い。日本の場合は面白いように、それが逆転していて、システムがカチカチでどうにもならないのを、人間がカバーしている感じだ。両方のいいところが合わされば完璧だけど、悪いところだけが合わさるのだろう。

 

皮肉屋で知られるイギリスの劇作家ジョージ・バーナード・ショーが、とある女優から熱烈なラブレターを受け取った。手紙には、「あなたの明晰な頭脳と私の魅力的な体を受け継ぐ子供が欲しい」というような内容。ショーは「僕の貧弱な体とあなたの貧弱な頭を受け継ぐ子どもが生まれてしまう」と皮肉に断ったという。きっと、日本とアメリカのシステムもこうなるだろう。

 

弟に見に行ってもらった。今度は確実に役所からの手紙が届いているはずだから探して欲しいとお願いした。見つかった。母親が封を開けていたのに、何も言わなかったらしい。弟も封が開いているから母親宛の手紙だと思っていたらしい。写真で書類の内容を送ってもらった。便利だ。

 

母親には、僕と妻宛の手紙は封を開けずに、別にして常に弟に見せて、僕まで写真で送るようにして欲しいとお願いした。頼る身だから叱りたかったけど、叱ることもできない。ただただお願いした。もう何度目だろ、とは思ったけど。

 

役所にはスカイプで電話した。スカイプから普通の電話回線に電話をするのは無料ではない。有料だ。それに時差もあるから、夜遅くに電話をすることになる。妻の住民税のことでもあったので、妻が電話した。

 

面白いぐらいに話が噛み合わなかった。僕に替わった。相手はおっさんだ。僕の得意とするところだ。高圧的なおっさんには論理的かつ高圧的にいけばだいたい解決する。

 

「わかりました。では、海外から住民税を支払うことはできないんですね。こちらは支払う意思があり、支払いたいと言っていて、そちらにも海外送金を受け入れるシステムがあるにもかかわらず、海外から住民税を支払うことができないということであれば構いません。こちらの支払いが拒絶されたと認識させていただきます。その旨のお手紙をこちらからも出させていただきます。内容証明で送ればよろしいでしょうか。また、役所からも住民税の支払いを拒絶したという旨の手紙を送ってください。これで終わりですね」

 

とやると、先ほどまでの高圧的な態度が突如としてしどろもどろになった。

 

このあとは、別の部署で担当することになり、やりとりはメールになった。必要な書類は添付すればいいことになり、無事に住民税を支払うことができた。このやり方はイレギュラーらしいけど、そもそも海外から住民税を支払うということはそんなにあることでもないだろう。役所の日常業務からすれば海外からの住民税支払いはイレギュラーかもしれないが、日本で働いていて、海外に行った場合は必ず起こることだ。このくらいはマニュアル化していいと思う。

 

もしかしたら、住民税を支払わないままばっくれてしまうのが普通なのかもしれないけど。または、日本にいる人に頼ってうまいこと処理をしているだけかもしれない。どっちにしろ、税金を支払ってというなら、支払いやすいようにして欲しいと思った。