いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

セサミプレイスで困る!(ボストン篇)<テーマパーク内の食べ物はテレビで見たことがあった>

「テーマパークに子を連れて」(長女1歳)

 

困ったことがあった。

 

僕はあまりテーマパークに行ったことがない。東京ディズニーランドには2回くらい行ったことがあるけれども、高校生とかそのくらいの歳になって、とくにディズニーに興味もない男子が行ったとしても、醒めているのがカッコいいとか勘違いしがちなお年頃でもあるから、夢の国のノイズとしてそこにいただけだった。

 

子供の頃に、ディズニーランドに行っていたら違ったのかもしれない。小学校の卒業アルバムに、卒業の年にあった出来事みたいなのがあって、そこにドラゴンクエスト3と並んで東京ディズニーランドのオープンが書いてあった記憶があるから、小学6年の多感な頃に東京ディズーランドに行くことは難しかったのだろう。ドラゴンクエスト3の抱き合わせ商法の方が多感な僕に影響を与えたかもしれない。

 

僕が育ったところの近くには遊園地もあった。新聞勧誘のお兄さんがくれた遊園地のフリーパスだったか入場券だかを握りしめて自転車で遊園地まで行くのだけれど、フリーパスでも遊べない遊具もあったと思う。バルーンハウスみたいなものは別料金だったかもしれない。

 

テーマパークの別料金といえば、グッズはもちろんだし、ジュースや食べ物も別料金だ。何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれない。しかし、これらが別料金であることが僕には大きな問題だった。入場券は持っているけれども、お金は持っていなかったからだ。

 

テーマパークの食べ物は高い。大したことなさそうな物でも高い。大人になれば、そんなところでわざわざ買わないで、家に帰って食べればいいと思う。大人であればそうだろう。

 

お祭りなどと一緒で、子供はそういう特別な感じの雰囲気で食べてみたいというのがある。アメリカンドッグなどでもいいから食べてみたかったし、氷だらけの炭酸の弱いメロンソーダとかを飲みたくなってしまうものだ。しかし、僕はお小遣いを持っていなかった。

 

「みんながジュースを飲んでいても、あなたは水を飲みなさい」

 

その言葉を僕はずっと覚えていた。30歳も過ぎてその言葉を母に言うと、「そんなこと言ったっけ?」「ジュースくらい買ってあげればよかった」と言われたが、僕にとって、テーマパークなるものは、そういう貧しさの記憶と結びついてしまっていて、夢だのなんだのを感じる場所ではなくなっていた。

 

弟は、子供ができるとよくテーマパークに行くようになった。そしてグッズや食べ物をたくさん買ってあげているという。「反動だよ、子供の頃にしてもらえなかったことをやってあげたくなるんだ」と言っていた。僕もきっとそうするだろう。

 

子供ができたら、東京ディズニーランドに行こうと思っていた。しかし、すぐに渡米。アメリカはディズニーの本場だからフロリダだかどこかに行けばいいと思っていた。なかなか遠い。そんなことを思っていたら、妻の仕事でペンシルバニア州フィラデルフィアに数日行くことになった。

 

セサミストリートのテーマパークがあるみたいだよ」

 

妻が言っていた。ネットで見ると、ディズニーランドの比じゃないくらいひっそりとしている。子供の頃に僕が行った近場の遊園地のようだった。

 

セサミストリートのテーマパークは、フィラデルフィアから少し離れている。アメリカでは、チャイルドシートないタクシーに幼児を乗せて乗ることはできない。チャイルドシートの用意がなかったので、困っていたが、ウーバーなら乗せてくれる人もいるということだった。結局、タクシーで行ったかウーバーで行ったか覚えていないけれども、どうにかして、セサミプレイスに行った。

 

一泊の予定だった。着いた日と、帰る日の2日ほど遊ぶ。1日券を買うより、年間パスポートの方が安いとかなんとか話した気もするけれども、この辺は妻に任せてしまったのでよく分かっていない。

 

セサミプレイスだけじゃないことだけど、テーマパークは1歳児の段階では遊ぶものが限られている。メリーゴーランドみたいなものに乗ったり、すでに安定した歩き方をしていた長女が園内を歩いては、エルモだのアビーだのビッグバードなどの着ぐるみと写真を撮る。そのくらいしかできない。カウントの人が愛想よかった。

 

エルモのショーがある。これがメインだった。エルモミュージカルだったかもしれない。アメリカのテレビ番組でセサミストリートを見ていた長女にとってエルモはお馴染みだった。一生懸命見ていた。そして、夕方にはパレードがあった。人もまばらなテーマパークなのにこのときだけ人が増えた気がした。後ろの方から長女を肩車して見せていたけど、反応はなかった。

 

このあたりは、普通のテーマパークだろう。こじんまりとしてそれはそれで好感が持てる。グッズも充実しているから、僕は積年の恨みを晴らすように長女にグッズを買った。自分のために買ったクッキーモンスターのマグカップは、一ヶ月もしないうちに壊れた。

 

問題は、食べ物だ。テーマパークの食べ物はたいしたことがない、そう僕は思っていたが、テーマパーク補正で食べたくなるものだと思って、テーマパーク内で食べようと思った。食堂に行って、メニューを見ると、普通に不味そうだった。配膳されてプレートを見ていると、あることを思い出した。

 

これは、アメリカの刑務所とかの映像で見た感じのランチだ。それなりに高い。

 

金を出して食う物じゃない。大人になった僕はそう思った。しかし、子供の頃に、こういうところで食べることは大事な思い出になるはずだ。1歳児だから何も覚えてないにしても、証拠の写真を撮っておかねばと思って、写真に撮ると、やっぱり刑務所のランチだった。

 

「セサミプリズンって感じになったね」

 

妻とそんな話をした。次の日、さすがにセサミプレイス内のプリズンランチはいやだったので、出入り自由のチケットの特権を活かして、近くにあるお食事処に入った。何件か並んでいた。そこでランチを頼んだ。セサミプリズンのランチと値段はそう変わらなかった。

 

とてもおいしかった。

 

妻が食べていたクラブケーキというカニのコロッケみたいなものもおいしかったし、僕が食べたフィリーサンド(フィラデルフィアのことをフィリーという)もおいしかった。スープもついていたと思うけれども、それもいい。フィラデルフィアは全体的においしいお店が多いと思う。

 

やっぱり、しょんぼりとしたテーマパーク内の食べ物を食べるなら、外で食べた方がいい。母の教えの方が正しかった。でも、そのことは母に伝えていない。