いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

ベビーシッターに困る!<上>(ボストン篇)<虐待の可能性に気づいたら>

「疑惑のベビーシッター」(長女1歳)

 

困ったことがあった。

 

妻の職場には、アメリカ生活に慣れるために英語教室のようなものが開かれていた。世界中から人が集まるアメリカだからか、さまざまな国の人が参加している。妻が通っていたところは、主に夫の海外勤務に帯同している妻たちのために開かれていたということもあり、英語教室の時間はベビーシッターサービスもあった。

 

帯同していたのは僕なのだから、男女関係ない帯同者のための教室にして欲しいとは思ったけれども、そういうのはなかった。

 

妻が英語教室に通うときにはベビーシッターサービスも使えるということで、その時間は育児からも解放されて、僕がのびのびと過ごせるだろうということもあって、妻は子供を連れて通っていた。

 

2回、3回と通ううちに、長女の様子が変になっていった。英語教室の近くに行くと泣き叫ぶようになったということだった。

 

妻と一緒に英語教室に通っている人に聞くと、嫌がっている子供もいるという話が出た。言葉が話せる年齢になっている子からは「怖い」とか「知らない言葉で話している」とか、そんな話を聞いた。

 

ベビーシッターのサービスを行なっている団体は、日本人が経営している団体らしい。シッター中は日本語で話しているということだった。ボストンでは日本人の評判はいい。親切で丁寧で清潔とよく言われていた。僕も日本人のシッターと聞いて安心したくらいだった。

 

しかし、さまざまな国から来る人たちからすれば、シッター中に日本語で話されても困ってしまうということだった。それぞれの国の母語は無理だとしても、せめて子供たちにも英語で接して欲しい、ということを言っている人もいたし、公平性から考えても僕もそうすべきだと思った。

 

他の国の子供であれば日本語に混乱するかもしれない。でも長女は家で日本語を聞いている。日本語だから怯えるということはないだろう。なのにベビーシッターの部屋に入るときには泣き叫んでしまうという。

 

英語教室が終わる頃に妻を迎えに行った。長女の様子が少しおかしいということだった。僕と合流すると泣き止んではいたが、何かおかしい、妻は抱っこに疲れたようで、ベビーカーに長女を座らせていた。苦しそうにしている。ベビーカーを見てみると、ベルトがキツく締め付けられていた。

 

最近、ベルトが締められていることがあった。なぜだろうと思っていた。気が付く度に緩めていたけれども、英語教室の帰りになると締め付けられていることが分かった。長女をベビーカーから出して抱っこすると、カラフルなシリアルがベビーカーのシートに散乱していた。

 

ベビーシッターからは、ベビーカーのまま部屋に入るように言われているという。その理由は、眠そうにしているときにはベビーカーに乗せてそのまま眠らせるからということだった。部屋の中にはベッドがないし、他の子どもも走り回っているから寝転がるのは危険という配慮らしい。

 

長女はなかなか寝つかない。とくに妻が英語教室に行く時間に寝てくれることはベビーカーの中であってもなかなかない。お昼を食べて、排泄して、散歩をしてやっと寝てくれる。そんな感じだから、眠ることを理由にベビーカーに乗せられていることには違和感があった。しかし、このベルトの締め付けがシッターによって行われているということで、僕は確信した。

 

無理矢理、縛り付けられているに違いない。

 

その日の様子を妻に聞いた。すると、シッターの部屋に行ったときに、代表のシッターから日本語で「うるさいのが来た」と言われたという。妻は気の強いタイプなのだけれども、突然の言葉にはなかなか対応できない。喧嘩慣れはしていない。

 

長女には悪いとは思ったけど、次も行くことにした。今度は僕も一緒だ。

 

本番当日。僕はシッターの部屋に張り込んだ。何かあればすぐに入るつもりでいた。中の様子は真ん中が曇りガラスで見えにくいけれども、下と上は透明なのでどうにか写真が撮れる。どのようにされているのか、こまめに時間を測ってメモと写真を撮っていた。部屋の前を通る人からは不審者を見るような目で見られていた。

 

妻が長女を預けて5分としないうちに、シッターは長女をベビーカーに縛りつけた。ベビーカーのベルトには印がしてあるし、写真もとってある。長女の泣き声が聞こえた。長女はずっと泣いていた。あまりに泣いていたので、いたたまらなくなった。

 

しばらくすると長女は泣き止んだ。覗いてみると、寝ておらず、手足を動かしているのが見えた。シッターの代表は仕事仲間ではなさそうな日本人とずっと話していた。他に三人くらいシッターがいて、長女のベビーカーをたまに動かしたりしている。

 

英語教室の休憩時間に妻が出てきた。シッターの部屋に入ろうとしていたので、静止した。僕も一緒に入ることにして、役割を決めた。僕がシッターを問い詰め、妻は長女を保護することにした。

 

ちなみに、ベビーカーにはレコーダーを設置していた。シッターの部屋に入る前に録音のボタンをおしていた。きっと、無断での録音に対して文句が出ると思ったので、ベビーカーにはクロアチア語で録音中と書いておいた。わざわざクロアチア語で書いたのは、きっとクロアチア語であれば日本人のシッターも読めないだろうと思ったというのもあるし、シッターの代表は日本語話者でもない子供たちに日本語で接しているのだから、目には目をという気持ちでクロアチア語にした。

 

長くなってしまったので、続きはまた明日にしようと思います。