いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

チャリに困る!(ボストン篇)<ボストンで自転車に乗るのは勇気がいる>

「ママチャリを買いに行ったらかっこいい自転車を買うことになった」(長女10ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

僕は昔から自転車が好きだった。好きだったと言うよりも、車酔いが激しかったためバスに乗れず、人混みが苦手なので電車にもあまり乗らないということで、自然と自転車を使うことが増え、そして使っていると愛着もあるのか好きになるというのがあった。

 

小学生か中学生の頃、ツールドフランスの総集編がテレビでやっていた。いまもやっているのかもしれない。そこで思っていたのは、自転車でもこんなスピードで走ることができるのか、ということと、自転車でも遠くまで行けるということだった。

 

そのころ近所の自転車屋さんに、ツールド秩父のポスターが貼ってあった。いまもやっているのかそれは知らない。自転車で秩父に行こうとは思わなかった。

 

どこに行くにもできるだけ自転車ということで、何台も何台も自転車を乗り潰しては新しいものを買っていた。安い自転車は長くても二年くらいで車輪が歪み、車体がギシギシ鳴っているような気がした。僕の体重が重かったというのもあるけれども、自転車に乗っている時間が長いから仕方ない。

 

マウンテンバイクやシティバイクに手を出したこともある。路面とタイヤから聞こえるグングンという音は格別な気がした。中学生の頃、調子に乗って坂道を下って思いっきり転んでズボンをボロボロにしたこともあった。転んだ先のガソリンスタンドのお兄さんが出てきて、傷の消毒やら、自転車の点検をしてくれた。ボロボロのズボンに「一張羅が台無しだね」と言っていたので、「ズボンはまだ持っています」とか変な意地を張って答えたことを思い出した。少し恥ずかしい。

 

20歳くらいのときにシティバイクを乗っていたことがある。当時はやっていた。自動車メーカーが自転車を作った感じのものだった。お金を貸していた友人から借金の代わりに貰った物だった。「前輪が外れ易いから気をつけて」という物騒な自転車だった。

 

友人の前で自転車を点検していると、車輪を挟む部分の金具に締め付け用のレバーがあって、それが単に緩めた状態になっていただけだった。

 

しばらくシティバイクというのか、ロードバイクというのか分からないけれども、そういう自転車に乗っていた。この手のタイプは、ハンドル部分とサドル部分に体重が分散されるため、長時間の走行に適しているということだった。僕の行動範囲は広がった。

 

二年くらいした頃だろうか、手首が痛くなってきた。

 

僕は仕事でデータを打ち込んだり、書き写したりすることが多かったので、手首が痛いと作業に支障をきたす。最初は原因が分からなかった。どうやら、自転車のせいじゃないかと気がついた。

 

お尻に全体重が乗るタイプの自転車じゃないと、僕の貧弱な手首には向かない、いや、強靭なお尻は全体重を支えることができる、ということで、ママチャリになった。

 

それからはずっとママチャリだ。ママチャリも高級化して最終的には5万円くらいのママチャリに乗るようになった。快適だった。ブリヂストンのママチャリは最高だった。

 

このママチャリはアメリカに行く時に、お世話になった自転車屋さんに代車用にでも、ということで譲ってきた。5年以上毎日にように使ったママチャリなので全体的にガタもきていたということもあり、友人に譲るには不安だった。

 

ボストンは雪が多いから自転車を買う予定はなかったけれども、気晴らしかつ運動のためにママチャリが欲しかった。しかし、ボストンにはママチャリがなく、売っているのは、ロードバイクばかりだった。

 

ボストン界隈での自転車事情を説明すると、車道をすごい勢いで走り抜ける。これがボストンの自転車の普通。乗っているのはほとんどが若者で、日本のようにお年寄りがふらふらと自転車を漕ぐなんてことは滅多に見かけない。自転車は危ない乗り物という認識がある。

 

交差点などで、自転車と車が言い争いをしている風景もある。僕もこの中に飛び込むのか、と考えると、確かにママチャリのスピードでは逆に危ないという気もした。そんなことからロードバイクを買うことになった。ヘルメット着用は州法で決められている。

 

自転車は快適だった。けれども、怖かった。乗るたびに怖い。ボストンの道は直径30cmくらいの穴があったりする。知っている道以外を飛ばすのは危険だった。

 

自転車は運動というよりスポーツのような感じになり、乗るたびに疲れていた。そして次第に乗らなくなった。たまにバスで行くのが大変なところに用事があるときには乗ったけれども、月に一度乗るか乗らないかくらいになった。もう、僕もそんなに若くない。

 

自転車を買ったときは、後ろにベビーカーをつけて走ろうと思っていた。あれはボストンの交通によほど慣れている人じゃないとできないので、もし、ボストンの育児で自転車を考えている人がいたら、ボストンを走り抜ける自転車たちをじっくり観察したあとに決めた方がいいと思う。