いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

お風呂で困る!(ボストン篇)<産後の妻は病院へ、僕は長女と浴槽へ>

「風呂とオックス」(長女2歳1ヶ月、双子1日)

 

困ったことがあった。

 

長女はいつも妻とお風呂に入る。僕と入ったことも何回かあったけれど、僕と入ると大泣きしてしまう。なぜそんなに泣くのだろうかというくらい泣き出してしまうし、泣いている長女の体を洗い、頭を洗っていると、世話をしているだけなのに責められているような気がして、僕も落ち込んでくる。

 

僕はバスタオルで長女を拭く担当だった。そのあと、ベビーローションやオイルを塗って、オムツを履かせて着替えさせる。拭かれているときの長女はその日その日で機嫌が変わり、泣くこともあったし、暴れることもあるけれども、2歳くらいになると落ち着いてきた。

 

双子の出産の日、長女は幼いため立会はできないことから、友人の家に預けていた。僕や妻がいないと大泣きしてしまう長女だけれども、前もって友人宅で遊んだりしていたからか、その日は長時間の両親不在でもあったにも関わらず、楽しく過ごしていた。

 

病院から長女を迎えに行くと、楽しく遊んでいた。長女が持って行ったおもちゃを、友人の子供たちが壊してしまったということで謝られてしまったが、それもこれも長女がいつも乱暴に扱っていたので、真似をして壊してしまったということだった。

 

僕はそのおもちゃが最初から少し壊れていたことを知っていたし、子供のおもちゃなんて壊れるのが前提のようなものだから、気にしないで欲しいと言って、感謝をして長女を連れて帰った。長女は、帰るときにベビーカーで泣いていた。もっと遊びたかったらしい。

 

妻のいない部屋は僕でも寂しく感じた。長女も少しは不安になったようだけれども、お気に入りのアニメをテレビで見たり、好きなフルーツパウチを食べて機嫌は良くなっていた。

 

長女を風呂に入れることにした。

 

長女の機嫌をとるために、お姫様のカチューシャみたいなシャンプーハットと、クジラ型の風呂桶を用意していた。前もって遊ばせていればよかったのかもしれないけれども、新品のおもちゃはそれだけで機嫌も良くなるから、その日のために隠しておいた。

 

お風呂に入る前に、シャンプーハットのカチューシャをつけるととても喜んでいた。クジラ型の風呂桶も気に入ったようで、お風呂で遊ぼうね、というと喜んでいた。作戦はまずまずといったところだ。

 

アメリカのお風呂は、日本よりも使いにくい。浴槽が狭いというのもあるし、風呂場に洗い場がない。ユニットバスがアパートメントだと普通の設備になる。また、シャワーは固定されていて、シャワーヘッドなどを手元で操作することもできないので、2m近く上方にあるシャワーから浴びるようにしなければならない。大人であれば立ちながらシャワーを浴びるだろうし、ホラー映画であれば、シャワーを浴びているときに何かが来るのだろう。

 

風呂に入る前は喜んでいた長女だけれども、いざ、浴槽に僕と二人で入ると泣き出した。

 

「ママー! ママー!」

 

「ママは病院だよ、いないよ」

 

というやりとりを何度もしていた。シャンプーハットは投げ捨てられ、クジラ型の風呂桶は注目もされなかった。

 

周囲からは虐待でもしているのかと勘違いされるくらい泣いている子供の頭を洗い、体を洗った。自分の体なんて洗っている余裕はない。

 

浴槽から長女を出してバスタオルで拭いた。長女は泣き止んで、その後、笑い出した。

 

「オックス! オックス!」

 

そんなことを言って、僕の一部分を指差して笑っている。僕が長女の前で裸になったのは、長女がまだ一歳になる前にお風呂に入れて以来だった。

 

プリンセスのカチューシャもクジラ型の風呂桶も長女を笑わせることができなかったが、僕の自前のものは十分に笑えるようだった。オックスの発音は、オにアクセントをおいて、クスはちょっと力を抜く感じだ。斧の英語であるアックスに近い。

 

笑い物にされた自分の一部分を励ますように、アックスみたいなものかな、と考えるようにした。次の日もその次の日も、妻が長女と一緒にお風呂に入れるようになるまで、僕はオックスをブラブラさせて長女を笑わせるようになった。前ほど泣かなくなった。

 

クジラ型の風呂桶はその後、お風呂に入るときに便利だから僕が使うようになった。お姫様のカチューシャはさすがに僕が使うのは気が引けて使っていない。