いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

通訳にされて困る!(ボストン篇)<ハッタリとしてのフランス語だったのに>

「英語クラスで通訳になる」(長女6ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

ボストンには妻の仕事で来ている。つまり、僕にはどこかに通うとかそういう用事もない。家事と育児をする毎日で、外に出かけるのは買い物か、子供と公園などに行くくらい。公園に連れて行くといっても、生後6ヶ月の娘が遊ぶわけもなく、ただ外気に当てて、ニコニコしていたり、排便をする娘を世話していた。

 

妻から、妻と子供以外のつながりを持たない僕に、図書館でやっている無料の英会話のクラスでも受けてみればと言われた。

 

僕は英語があまり得意じゃなかった。仕事で外国の方と一緒になることもあったので、カタコトの英語は話すけれども、母語が英語の人だとその速さについていけないことあった。英語ができる人は、そういうときは「ゆっくり話してください」って言えばいいみたいに言うけど、またすぐに早くなる。

 

そんな英語ネイティブをゆっくり話させる技がある。

 

英語ネイティブに対して、違う言語で堂々と話すと効果的だ。喧嘩をするなら日本語でもいいけれども、コミュニケーションを取りたいと思っているのなら、互いの母語で話してもしかたない。

 

英語ネイティブに英語で話しても英語が当然だと思われて、どんどん早くなる。考えてみれば、日本語ネイティブだって外国の人が外国語としての日本語を話しているのを忘れて、早い日本語で話してしまう。僕も母語で話すとそうなってしまう。

 

互いに外国語を話してみたらどうだろうか? 英語にしても、外国語として英語を話している人とは比較的英語で話し合える。それを英語母語の人にやってみよう。

 

効果的なのはフランス語だ。フランス語は英語が母語の人にとってなんとなく触れたことがある外国語という感じがする。教養のあるアメリカ人はフランス語を話せないことに負い目を感じることもあるらしい。

 

僕は、昔、お世話になった人がフランス語の先生をしていたということもあって、フランス語を学んだことがある。流暢に操れるわけではないけれども、日常生活くらいならフランス語は話すことができた。20年近く前に勉強しただけで、ほとんど使うこともないから忘れてしまったけれども、英語母語の人と話すときだけ駆け引きの一つとして使っていた。

 

無料の英語クラスは、アメリカに何年も住んで英語が流暢になっている人から、全く話せない人までいる。クラスの担任が言うには、日本人は英語ができないって言うだけで、それなりにできる人が多いとのことだった。

 

英語クラスの英語は確かに簡単だった。発音は難しいけれどもやっていることは中学校あたりでやった英語だった。ニューホライズンを思い出していた。

 

アフリカから来て半年ほどになる女性がいた。彼女は英語が全く話せなかった。名前を聞いても分からない、どこから来たのか聞いても分からない、英語の担当者は犬のお巡りさんにみたいになった。日常生活だけでなく、入国のときはどうしたんだろう? とか思った。

 

アフリカの女性は、ふと言葉を発した。フランス語だった。クラスにはフランス語が話せる人が一人だけいた。ハンガリー人の男性だった。彼のフランス語も怪しいものだった。

 

駆け引きの道具としてフランス語を悪用している僕が通訳をした。彼女はどこから来て、何に困っているのか、英語は全く分からないから、どうしていいか分からないとか。担当者は英語のクラスだから他の言語は使っちゃいけないんだけれども、どんなことをしたいかくらいは決めようってことで、僕が通訳をした。

 

アフリカの女性に感謝された。

 

次の週に、クラスに行くと、アフリカの女性に頼りにされている感じがした。英語のクラスだからと、フランス語を控えていても、フランス語で通訳して欲しいという圧を感じた。来月には別の地域に引越すから、クラスにはもう来なくなると担当者に伝えて、僕はもう行かなくなった。

 

彼女もそのうち英語ができるようになると思うし、開き直ってフランス語を話せば、英語で話されてオロオロする人のように、英語母語アメリカ人がオロオロすることが分かったと思う。それが分かれば、解決にはならないけれど、安心してくるはずだ。その国で流通する言葉が話せないからといって縮こまる必要はない。

 

フランス語はアメリカでは便利だと思う。