いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

ウジに困る!(ボストン篇)<前の住民の忘れ物はバナナを吊るす籠だけじゃなかった>

「ウジだって赤ちゃん」(長女8ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

リフォーム済みの部屋が汚れていて、引越し前に二日間掃除したことはもう書いた気がする。

 

手作業で綺麗にはしたけれども、バスタブに塗装で塗り込まれた髪の毛や、内装のちょっと雑なところなどは見てみぬふりをして過ごしていた。掃除して綺麗になるものでもない。

 

二年弱の滞在とはいえ、それなりに居心地よくしなくてはならないし、幼児がいる家庭ならどこもそうだろうけれども、安全対策などを施す必要もあった。

 

リビングにベビーゲートを設けて、目を離すときなどはその中に子供を入れるようにしていた。

 

長女は敏感な子で、ベビーゲートに入れても、妻が見えるところにいると大泣きする。玄関から完全に妻が去ってしまって、外にいるとなると不思議と泣かなかった。

 

僕と幼い長女は、よくベビーゲートの中で遊んでいた。アメリカの子供たちがやるように、ベビーゲートの中にカラフルなボールをたくさん入れたりして、そこで寝転がったり、おもちゃを散乱させていた。

 

散乱していたのは、おもちゃだけじゃなかった。

 

ハエも産卵していたらしい。

 

前に住んでいた住人が汚部屋の主人であることは、リフォーム後の掃除で予想はしていた。しかし、リフォーム前の状態を見ていないから、どこまでの汚部屋であるかは想像していなかったし、汚部屋の清掃などしたこともなかったから、汚部屋の細部がどうなっているのか、または清掃後にもどんなことが起こるのかなんて考えてもみなかった。

 

長女が何かを掴んだ。

 

乳幼児が何かを摘んだら、それを注視するのが親の仕事だ。口に入れていいものか、どうかなのか、落ちたお菓子を拾って食べるくらいは許容範囲だ。

 

動いている。

 

幼児の手をグワッと掴んで、掴んでいるものを丁寧に取り出した。

 

ウジだった。

 

懐かしい。子供の頃、ハエが好きでビニール袋に集めていた。理科の先生に頼んで、見つけたウジとボウフラを顕微鏡で見させてもらったこともある。ウジは僕にとって懐かしいものだった。

 

長女をゲートの外に出し、おもちゃ用のコップを持って、ウジを探した。ボールプールの中にウジがいる。長女はゲートの外から僕を見ていた。

 

長女は僕が遊んでいるのを見守る親のような気持ちになっているのかもしれない。

 

妻から見れば、子供の遊び場を占領してボールプールで大人気もなく遊んでいるように見えたかもしれない。

 

ここは難しいところだ。たしかに、僕はハエとかウジが好きだ。そういうのを集めて蠢いているのを見ると、生命とか宇宙とかの神秘のことを考えてぼんやりとしてしまうことがある。しかし、今回は、遊びじゃない、遊びじゃなかったんだ。楽しいけど、ウジ探しはほんとに楽しいし、コップに溜まっていくウジの数を数えている僕はニコニコしているかもしれないけれども、これは、困った事態なんだ。

 

ボールプールの中のウジはだいたい拾った。でも、きっと、このリビングにはたくさんいるに違いない。ウジが確認できた場所から、ウジが発生した場所を特定することにした。

 

レンガの壁側から発生しているようだった。ソファーを動かし、ウジを探した。暖房器具のカバーも外して、ウジを探した。妻と長女はそんな僕を見守っていた。

 

ウジをたくさん見つけて大満足だった。念のため、殺虫剤とかを散布しておいた方がいいと思ったので、後日、妻に長女を連れて外に出てもらっているときにレンガ壁あたりを徹底的に殺虫、清掃をした。

 

夏を迎えると、ハエが大量に発生した。2週間近く発生し続けたと思う。僕は毎日、ハエを捕まえた。もちろん、素手だ。手の中でハエが動いている感覚は子供時代を思い出させた。

 

「今日、ハエいた?」

 

と聞くと、妻は子供におもちゃの場所を聞かれたみたいに、ハエのいる場所を指差した。翌年はハエが出なかった。ウジもハエも捕まえた後はきちんと除菌して、手を洗っているので安心してください。