いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

両替に困る!(ボストン篇)<25セントに両替するときにはつべこべ言わなくていい>

「ドルの発音が通じない」(長女8ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

アメリカに行くと、多くの人から発音が通じなかったという話を聞く。僕も発音には困っていた。

 

我が家の洗濯事情はコインランドリーがメイン。そのコインランドリーは25セント硬貨しか受け取ってくれない。帰国間際に急にアプリが使えるようになっていたけれども、仕組みもよく分からないし、もうすぐ帰国だからということでコインランドリーアプリは使わなかった。

 

毎回、25セント硬貨が何枚も必要になる。25セント硬貨は、クォーターと呼ばれている。そんなこともボストンに来たばかりの頃は知らなかった。知らないことばかりだった。両替は、近所のドラッグストアでやってもらえると知人に教えてもらった。彼は毎月、銀行で大量のクォーターを手に入れているとのことだった。

 

「10ドル紙幣を25セント硬貨に両替して欲しい」

 

全く通じなかった。

 

まず、ドルが通じてないことが分かった。ダラー、ドゥラー、とかいろいろ試して、ドィゥラー、ディァウラーみたいに言ったら、必死さが通じた。店員の人も母語は英語じゃなかった。そして、25セントに両替してほしいというのもなかなか通じなかった。硬貨を出して、モアコインみたいなことを言ったら通じた気がする。

 

生活に必要な25セント硬貨の両替ですらこの調子なら、これからアメリカ生活は一体どうなるんだろう、と不安になった。

 

知人に両替がなかなか通じなかった話をしたら、不思議な顔をしていた。僕の通じなかった英語を再現してみたけれども、普通に分かるけどなあ、みたいな反応だった。そのときに、25セントとかコインって言われてもピンと来ないから、次からはクォーターって言ったらいいと言われた。

 

次にドラッグストアに行ったら、同じ店員さんだった。10ドル紙幣を見せると、何も言わないで、分かったぜ!って顔をして両替してくれた。言葉はいらなかった。

 

両替はできたし問題はないのだけれども、僕の言葉というか発音が通じなかったことの解決にはなっていない。

 

僕は、日々、ドルの言い方を工夫していた。ダラーをもうちょっとこなれた感じにして、というか、ごまかすような感じにしてみた。ダに少し力をいれてあとは惰性で発音してみる。ラは気持ちルに寄らせる。ダァラァ、これで結構通じるようになってきた。

 

発音で通じるようになってきたかどうか、それも実際のところ、分からなかった。もしかしたら、僕は発音よりも演技が上手くなってきていて、仕草とか表情とかでドルに関する数字を言っていると示すことができているだけかもしれない。

 

行きつけのスーパーマーケットができた。そこでは両替をやってくれるコーナーもあるから、頻繁に利用することになった。

 

「クォーター プリーズ」

 

これで問題なかった。ドルも25セント硬貨も、何もいらない、ただ、ほしいものをずばり言えばいいだけだった。

 

ジェームス・ディーンだったか、演技の学校で、コップの水が出てきて、それをどうするのかという課題をやっていたという話を聞いたことがある。いろんな人がコップの水に対してアプローチをしているところで、ジェームス・ディーンの番になった。

 

彼はコップの水をグイと飲んだだけだったという。

 

「水はただ飲めばいい」

 

そんなかっこいいことを言ったらしい。

 

僕はジェームス・ディーンになったつもりで、10ドル紙幣を出して、細々したことは言わずに、ただそれを出すだけになった。行きつけのスーパーマーケットの店員さんはだいたい挨拶するくらいの仲になっていたから、言葉なんていらない。

 

僕は10ドル紙幣をグイと出す。すると、クォーターと呼ばれる25セント硬貨が10ドル分出てくる。

 

「金はただ出せばいい」

 

それだけだと失礼だから、お礼や挨拶はしていたけれども。