いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

船便に困る!(ボストン篇)<放置されていた船便を筋肉兄貴が持ってきた>

USPSの兄貴登場」(長女6ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

引越は大変だ。世の中には引越好きな人がいるらしいけど、僕は好きになれない。引越は決まって何かが失くしてしまうか、失くしたと思って探すのをやめたときに出てきたりして、日常的に使うものだったら買ったあとに見つかったりするし、なんだかんだと二ヶ月近くは普通の暮らしに戻れない。

 

だから僕は引越が苦手だ。それなのにいろいろあって、5年間で6回の引越をした。うち3回は一ヶ月から二ヶ月の滞在期間の引越だけれども、大きな引越は3回あった。

 

引越業者を利用したのは、アメリカから帰国後、東京郊外に一年暮らして、いま住んでいる名古屋への引越だけだ。あとの5回は手作業の引越だった。

 

妻の仕事でアメリカに行くといっても、企業で派遣されるわけでもないので、おまかせパックのような豪華なものが利用できるわけもない。節約しなければならないということで、必需品は航空便、一ヶ月くらいかかってもいいものは船便、という組み合わせだった。

 

コロナ禍の船便ほど遅延しないけれども、当時から船便は遅れるとかなんとかと「船便 日数」などで検索したブログには出ていた。中には、船便で荷物が届いただけラッキーだ、という過激な意見もあった。

 

船便のサービスも調べてみると意外とややこしい、個人の船便は終了しているとかいろいろとあって、そのときは日本郵政の船便を使った。11個以上は割引になるという制度があった。いまはないと思う。

 

「11個以上だと割引なんですよね?」

 

「今月末で終わる割引サービスなんですよ」

 

どうにか割引してもらえた。一万円くらい浮いた気がする。船便ひとつの重さが25kgまでとかだったと思うから、ひとつひとつ抱えて体重計に乗って量った。こういうことが大事だ。どれも22,3kgくらい。本ばかり入れていてもそのくらいだから、25kgとなると相当重い。

 

船便は無事に出た。船便じゃないけど、航空便で送った荷物は一つがとめられて届かなかったけれども、その顛末は長くなるのでまた別に書くことにしよう。

 

ボストンに着いて2週間くらい経った。予定では2週間あたりで船便が届く可能性がある。追跡番号を調べると、日本はとっくに出ている。太平洋を航海する荷物に思いを馳せて、なんだか僕まで船旅をしているような気持ちになった。

 

ボストンはアメリ東海岸だ。日本からだとどういうルートになるんだろう。西海岸から陸路になるのか、それともパナマ運河を使うのだろうか。こんなことを考えるだけでもワクワクした。パナマ運河の画像を見て、カッコイイ! とか思って、スエズ運河も見たりした。いつかパナマ運河を見てみたいと思った。運河の仕組みを初めて調べた。ついでに歴史も。

 

一ヶ月が経った。もう運河のことはどうでもよくなっている。

 

追跡サービスみたいなところで見てみると、アメリカには来ているらしい。日本郵政からUSPS(United States Postal Service)という日本語だとアメリカ合衆国郵便公社に管轄が移っている。

 

他の手続きなどもあって、USPSのおじさんとは何度か話していた。

 

「日本からの船便が12個くらい来ていると思うんだけど、そろそろ届いてない?」

 

「12個も来てればすぐに分かるから見ておくよ」

 

そう言ってから二、三日経った。今度は、筋肉質な女性が来た。この人なら二つくらい運んでしまいそうだ。

 

「船便だけど、うちに届いてたよ。みんな運びたくないから放置しちゃってたみたい。でもね、私も運びたくないから、もうちょっと待ってね」

 

アメリカ人の悪びれなさはときに清々しい。特に急いでいるわけでもないし、荷物が届いているというだけで安心した。

 

数日後、ベルが鳴ってドアを開けると、半袖の袖がパンパンになりそうなくらいに筋肉が隆起した兄貴が来た。サングラスが頼もしさをいや増しにする。

 

「船便、12個持ってきたよ」

 

兄貴は20kg以上の箱を二つ重ねて運んだ。玄関で処理する僕が追いつかないのをニヤリと笑って荷物を持ったまま待っていてくれた。そして六往復して去っていった。去る時には後ろ姿のまま手を挙げていた。カッコよかった。

 

船便は無事に届いた。アメリカの船便は届かないことがあるみたいだけれども、郵便局に放置されていることもある。そんなときは、郵便配達の人たちに笑顔で話しかけて、どうなってる? みたいにするといいかもしれない。

 

近所のUSPSに電話だったか窓口だったかで聞いたときには、知らない、みたいな対応しかされなかった。彼らは面倒なことはしたくないし、直接言われないと動かないこともある。重い船便を10個以上も運びたくないのもよく分かる。

 

笑顔で接して、困っちゃたよーみたいに願いすると、アメリカでは誰かが助けてくれたりする。