いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

帰り道に困る!(ボストン篇)<ベビーザらスの帰りに途方にくれた>

「友達はウーバー」(長女5ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

ボストンについて滞在先に向かうタクシーの窓から、ベビーザらスが見えた。そこに行けば乳幼児の必需品はなんでも揃うだろう。しかしどうやって行けばいいのだろうか?

 

僕らが滞在した場所は、ボストンでも比較的治安が悪いと言われる路線のオレンジラインで、終点に近い場所だった。反対側の終点は治安が悪すぎるから用事がないなら行かない方がいいと地球の歩き方に書いてあった気もする。

 

子連れで滞在するとなると治安は気になるものだが、治安は数年で変わるらしい。ボストンにいて治安が悪いと思ったことはなかったけれども、7発の銃弾が飛び交う事件はあったし、早朝に草むらの近くをジョギングしてはならない、とかいろいろとあった。僕らがいた二年間はそれなりに落ち着いていたのかもしれない。

 

ベビーザらスがあるあたりは再開発地区のような雰囲気で、そこそこ治安が悪い場所みたい。悪そうな人が出てくる映画の舞台にもなったとか、そんな話も聞いた。

 

ベビーザらスに抱っこ紐で行くわけには行かなそうだった。

 

妻の友人の友人に会った。来たばかりの僕らは、ボストンでの生活や住むのにおすすめの場所などを聞いていた。そして、彼からウーバーを使えばだいたいどうにかなる、ということも聞いた。

 

ベビーザらスにはウーバーで行った。広大な駐車場に横に広い店舗。中はガラガラで、ベビーカーもたくさん売っていた。オムツ替え用の台やベビーベッドやらの家具が一体化したものなど、日本の狭い住環境ではちょっと想像がつかないものもあるし、授乳用のソファは快適そうだった。

 

アメリカでは乳児でも子供部屋に一人で過ごすことが多い。乳幼児の家具が充実しているのは、それだけのものが置ける子供部屋があるということだろう。

 

閑散とした店内に、広くて快適な授乳室。立派なオムツ替え用の台などの売れそうもない家具。こんな感じでもアメリカの企業はやっていけるんだなあ、と呑気にしていた。一、二ヶ月後、アメリカのトイザらスベビーザらスも経営破綻して全店舗が閉店するなんて、このときは思ってもみなかった。

 

アメリカのセールはなかなか派手だ。50%オフなんてものがよくある。今回の買い物の目的はバギータイプのストローラー(ベビーカー)で、乳児でも乗れるように揺籠のようなものがセットになっているタイプ。オレンジラインで会った子連れの女性が薦めてたやつ。そして半額セールだった。

 

日本にいたときもベビーカーは見て回った。日本のメーカーの丁寧で繊細な作りは乳幼児を慈しむような気持ちがある。アメリカのメーカーは、乳幼児の都合よりも、悪路をいかにタフに走り抜くかということがメインになり、親の使いやすさが目的になっている。英語とスペイン語が書いてある。アメリカ合衆国には法律で決められた公用語がない。そういうこともあるからか、公用語を使うというのではなく、多く使われている言語を使うという合理的な判断がある。ボストンの公共機関は英語とスペイン語が併記されることが多い。僕はスペイン語の疑問文を見るのが好き。

 

会計をして、発送の手続きをした。帰りもウーバーにしようと思ったら、ベビーザらスあたりには全然走っていない。店員さんに聞いてみたら、このへんはウーバーがあまり来てくれないということだった。タクシーを呼んでみたけど、1時間くらい待っても来なかった。僕らの前にタクシーに乗って行った人たちがいたが、もしかしたらそれだったのかもしれない。

 

「僕の友達がウーバーやってるから呼んでみるよ」

 

と店員さんが言ってくれた。しばらくするとウーバーがきた。ウーバーは配車した人がアプリから決済するシステム。つまり、店員さんが支払うことになっているということに妻が気づいた。

 

「お金はいらないよ、友達の車だからね。子育てがんばってね」

 

好青年だ。最初みたときにハリー・ポッターみたいなやつだな、と思ったことを心で謝った。ハリーも好青年かもしれないから謝る必要もないかもしれない。

 

アメリカにいると現金はあまり持ち歩かない。僕の手元には20ドル札一枚しかなかった。足りなくて申し訳ないと思ったけれど、20ドル紙幣を出した。断られたけれども、無理矢理渡した。店の外まで見送ってくれた。

 

ウーバーの中で、現金の不足分を補うように店員さんを褒め称えた。アメリカにはヒーローがときどき現れる。ベビーザらスが閉店して、僕らのヒーローはどこに行ったのだろう。