いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

ばあばに困る!(再東京篇)<ばあばの奇行に僕は苛立ち、妻は笑う>

「ばあばの本音」(長女2歳8ヶ月、双子7ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

帰国してから次の妻の赴任先まで一年間、東京に住むことになった。何かあったら子供の世話を頼めるかもしれないという期待もあって、母や弟夫婦が住む地域周辺で過ごすことにした。

 

ばあば、つまりは僕の母はちょっと変だ。変というか正直者だ。正直者といっても、自分の欲望や願望に正直という意味。

 

帰国前に比較的近所に住むことをばあばに伝えていた。

 

「私も男の子二人育ててるんだから、育児は任せなさい」

 

などと力強いことを言っていたが、長女が生まれたときにオムツ一つも換えることができなかった。よく泣く長女に疲れ果てていたら、「子供なんてものは泣くものよ、泣けばいいのよ!」と言っていたと思えば、「うるさい、うるさい、ほんとによく泣く」と言っていた。育児ノイローゼ気味だった僕よりも情緒不安定で、見ていて少し元気になった。

 

そんなばあばが「任せなさい」と言っていた。

 

少しは、ほんの少しは期待していた。また、三人の乳幼児の世話は、一人ではできないことも多く、夫婦のどちらかが仕事で朝早く出ていたり、夜遅く帰宅するときには、ばあばを頼りにしなければならないこともある。頼むといっても、長女と一時間くらいお留守番しておいて欲しい以外に頼んだことはない。一年間で二回頼んだ。

 

三人育児は物理的に対応できないことがある。

 

ばあばにお留守番を頼む。それだけでも大変だった。ばあばはよく道に迷うし、何度来ても電話で道案内しなければならない、ときには近くまで迎えに行かないといけない。コロナも心配ということで、触れる部分は全て除菌しながら来る。除菌したアルコールシートが玄関の傘立てに突っ込んであった。ゴミはゴミ箱に入れるか、渡して欲しいと思う。

 

長女と双子は別の保育園に通うことになった。しかもその保育園が地域の中では反対の方向。双子用ベビーカーと抱っこ紐を使えば三人同時に運ぶことは可能だが、双子の保育園から長女の保育園までは何もない状態で歩いても45分以上かかる。

 

双子の保育園まで20分、そこから長女の保育園まで45分、そして自宅まで25分。三人を徒歩で運ぶと一時間は軽く超える。車が必須の三人育児だけれど、妻は車の運転が苦手だし、僕だって数年間乗っていない。うちには車がなかった。

 

長女の保育園は自転車、双子の保育園はベビーカーとなる。基本的にはどちらかを一旦家に待たせるか置いて送り迎えをしている。送迎に大人一人、留守番役に大人一人。これがうちの送迎環境。

 

夫婦のどちらかがいないときには、ばあばに頼るしかない。ばあばは水曜日以外は暇だと言っている。朝七時に電話もかけてくる。

 

ばあばに来てもらった。双子の世話は難しいだろうから、長女を迎えに行って、自宅でばあばに長女を渡して双子の迎えに行こうとした。長女を預けようとすると、ばあばは上着を羽織り帰る準備をしていた。

 

「じゃあ、帰るわね」

 

「いや、長女と留守番して欲しいんだけど」

 

何しに来たんだ、このばあば、おやつとお茶とテレビを見るために来たのか? 僕はばあばが食べたがっていたパエリアだって作っていたのに、食べ残した分までタッパーに入れて持ち帰るつもりだった。残りは妻が食べる予定なのに。

 

何度目になるか分からない説明をして長女と留守番をしてもらった。

 

ばあばは電話では、孫に会いたい、長女に会いたい、双子に会いたいと言う。なのにばあばが来たがるのは、いつでも平日のお昼だ。子供たちが保育園に言っている時間に来たがる。妻も僕も在宅ワークが多い。

 

「子供たちがいないと静かでいいわねえ」

 

ばあばはそう言った。僕にとっては親孝行だから多少苛立つことはあるけれども、受け止めることができる。しかし妻にしてみれば、ばあばというよりただのババアだ。妻には、ばあばのことでよく謝っている。妻はそんなばあばが面白いらしく、ばあばの奇行が話題に出ると楽しそうに笑う。笑うしかないだけかもしれない。