いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

夜泣きで困る!(東京篇)<夜泣きのお供は白黒映画>

「お楽しみはこれからだ!」(長女3ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

赤ちゃんは泣くのが仕事だって言うけれども、働きすぎな赤ちゃんがたまにいる。初めての職場だと仕事をどれだけやればいいのか分からないときに、隣でバリバリ働く人が普通だと思ったりして、がんばってヘトヘトになることがある。

 

「あの人は仕事やりすぎだから真似しなくていいよ」なんて、職場に慣れてからポソっと誰かに言われるものだ。

 

長女はよく泣く赤ちゃんだった。おんぶしても抱っこしても泣き続けた。初期消火が大事とか、換気扇の下とか、テレビCMだとか、ネントレとか、電気製品をコンセントから抜けとか、抱っこして夜道を徘徊するとか、そんな夜泣き対策も教えてもらった。

 

赤ちゃんというか、子供というか、人間って、個人差大きいです。よく泣く子はよく泣く。お母さん、お父さんの対策不足じゃない。だから夜泣きで疲れちゃっても自分を責めないで欲しいし、泣き止まない子を抱きながらよからぬことを考えちゃうのもしかたない。目の下のクマは誰にも褒めてもらえないけど、僕は褒めたい。

 

夜泣きがはじまると暗い気持ちになった。またこれから数時間、赤ちゃんの仕事に付き合わないといけないのかぁって帰宅間際に仕事をふられたような気持ち。

 

たまにお腹の上に子供を載せたまま寝落ちして、ハッと気がついて落としてなかったって焦ったりもした。昔から夜勤をしていたから夜中に起きているのは平気だと思ってたけど、夜勤は休みの日があったからできた。

 

「お楽しみはこれからだ!」

 

夜泣きがはじまったときに、ふとつぶやいてみた。妻が笑った。僕も笑った。赤ちゃんは笑わなかった。

 

「ジャズシンガー」って映画の名台詞らしい。抱っこしながらDVDを注文した。

 

夜泣きのときに、映画を音なしにして見る習慣ができていた。「ジャズシンガー」ってきっと音ありにすることで意味があるんじゃないかな? とか思っても、音なんか出したら妻も起きるし、赤子は寝ない。

 

夜泣き中の映画鑑賞は目的もなく動く画面をぼんやり見るだけ。白黒映画が眩しくなくていい。でも今回は目的があった。

 

例の場面が見たい。そして可能だったら夜泣きのときにその場面を真似して妻を笑わせたいという魂胆。

 

ぼんやりしていたら見逃した。「お楽しみはこれからだ!」って感じがない。変な期待をしすぎたかもしれない。翌日、妻に映画を見てもらった。元のセリフは「まだ何も聞いちゃいねえよ」みたいな意味の英語らしい。これはこれで夜泣きのセリフにぴったりだった。

 

その日から、夜泣きがはじまると「お楽しみはこれからだ!」って、妻と僕は口にして、どうにか夜泣きとの付き合い方を楽しむようになった。たまに、赤ちゃんって寝るのも仕事ですよね!って思うこともあったけれども。